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AI導入・活用公開

運送業の中小企業のAI導入|法定の記録から始める棚卸し・点呼と配車の線引き・進め方【公的データ】

運送業のAIというと配車の最適化や自動運転が話題になりますが、車両が数台から数十台の運送会社が最初に取り組めるのは、点呼記録・業務記録・運行指示書など「法律で決まった記録」の周りにある事務の仕事です。中小機構の調査と厚生労働省・国土交通省の資料をもとに、どこから始めるか、何をAIに任せてはいけないかをまとめました。

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この記事の要点

  • 中小機構の調査(2026年3月公表)では、運輸業、郵便業の中小企業のAI導入率は9.7%で、業種の中で最も低く、全体(20.4%)の半分以下でした[1]。一方、導入費用の助成や従業員向けの研修を「必要」とする運輸業の割合は7〜8割と高く、関心がないのではなく、始め方が分からない業種だと読み取れます[1]。
  • トラック運転者には2024年4月から改善基準告示(拘束時間は原則で年3,300時間・月284時間)と、時間外労働の年960時間の上限が適用されています[2]。運転者の時間は増やせないので、減らすなら事務所の時間です。
  • 運送業の事務は、点呼記録・業務記録・運行指示書・運転者等台帳など、国土交通省の省令で項目と保存期間が決まった記録が多い業種です[6]。私たちは、この「法定の記録」を棚卸しの起点にして、記録そのものは規則どおり残し、その周りの転記・集計・連絡文・書類の下書きをAIに任せる順番をおすすめしています。
  • 点呼は原則対面で、自動化できるのは国土交通省の認定を受けた自動点呼機器だけです[8]。汎用の生成AIに点呼や配車の最終判断を任せることはできません。認定機器の導入には全日本トラック協会の助成(上限10万円)、デジタコ等の導入には国土交通省の補助(取得経費の3分の1、10両未満で初めてなら2分の1)があります[14][15]。

ガイドこのテーマの全体像は中小企業のAI導入ガイド

「運送業のAI」というと、配車の自動化、ルートの最適化、自動運転トラックが話題になります。どれも国が検討を進めている分野ですが、車両が数台から数十台で、社長や配車担当が事務も兼ねている運送会社が、最初に取り組むものではないと私たちは考えています。

中小の運送会社の経営者からよく聞くのは、「ドライバーの時間は規制で決まっているのに、事務所の仕事は増える一方だ」という話です。2025年4月からは、荷待ち時間の記録の対象が全車両に広がり、運送契約の書面交付や実運送体制管理簿の作成も始まりました[7][12]。この記事では、トラック運送の中小企業がAIを導入するときに、どの業務から始めるか、点呼・配車・書類をどう線引きするかをまとめます。数字と制度は、官公庁・公的機関の資料で2026年10月18日に確認したものだけを載せています。業務の分け方や進め方など私たちの考えは、そうと分かるように書いています。

データで見る:運送業の中小企業のAI導入はどこまで進んでいるか

中小企業基盤整備機構が全国の中小企業を対象に行った調査(2026年3月公表、回答1,668社、うち運輸業の有効回答31社)では、AIを導入している企業は全体で20.4%、運輸業、郵便業は9.7%で、12の業種区分の中で最も低い結果でした[1]。次に低い建設業(15.9%)、製造業(16.4%)とも差があります[1]。運輸業の回答数は31社と少ないため、数字そのものより「業種の中で最も遅れている」という位置づけとして読むのがよいと私たちは考えています。

同じ調査では、すべての業種でAIの導入率がITの導入率を下回っています。運輸業、郵便業の差は35.5ポイントで、デジタコや動態管理などのITは入っているが、AIはこれからという会社が多いと読み取れます[1]。

一方で、AI・ITの導入を進めるための公的支援を「必要である」と答えた運輸業、郵便業の割合は、次のとおり高い水準です[1]。

支援の内容運輸業、郵便業で「必要」と答えた割合
導入費用の助成80.0%
従業員向けの教育・研修76.7%
導入事例や活用事例などの情報提供75.9%
専門家の派遣や導入相談60.0%
実証実験や試行導入の機会58.6%

導入率は最も低いのに、費用の助成と研修を求める声は7〜8割あります。関心がないのではなく、何に使えるのか、どう始めるのかが見えていない業種だと私たちは読み取っています。調査全体でも、AIの導入の阻害要因として最も多いのは「導入にあたっての高コスト」(46.9%)で、「社内のAIノウハウ不足」(42.0%)、「社内のAI人材不足」(38.8%)が続きました[1]。

明るい材料もあります。2026年版小規模企業白書では、社内ノウハウの蓄積・共有に取り組んでいる小規模事業者の割合は全体で48.8%、白書が掲載した業種の中では運輸業、郵便業が57.1%で最も高くなっています[17]。記録と手順を残す習慣がある業種だということで、これはAIを使ううえでの土台になります。

運送業でAIの導入が急がれる背景:運転者の時間は増やせない

トラック運転者には、2024年4月1日から改正された改善基準告示が適用されています。拘束時間は1年3,300時間以内(労使協定で3,400時間まで)、1か月284時間以内(年6か月まで310時間まで)、1日は13時間以内が基本で最大15時間です。休息期間は継続11時間以上を基本とし9時間を下回らないこと、運転時間は2日平均で1日9時間、2週平均で1週44時間以内、連続運転は4時間以内と定められています[2]。あわせて、時間外労働の上限は原則として月45時間・年360時間、臨時的な特別の事情がある場合でも年960時間です[2]。

国土交通省の検討会は2023年8月の最終取りまとめで、年間の拘束時間の上限を3,300時間とし、荷待ち時間の減少などの対策を行わなかった場合、2019年度と比べて2024年度に輸送能力の14.2%(営業用トラックの輸送トン数換算で4.0億トン相当)、ドライバー数の減少も加味した2030年度には34.1%(9.4億トン相当)が不足する可能性があるという試算(株式会社NX総合研究所)を示しました[3]。2026年3月の検討会の提言では、官民の取組の成果などにより2024年度の約14%の不足は概ね克服できたとする一方、再検証の結果として2030年度には平均で約7%〜最大で約25%(1.7億〜7.2億トン)の輸送力不足が生じうるとしています[4]。

全日本トラック協会によると、中小企業基本法の定義(資本金3億円以下または従業員300人以下)では、一般貨物自動車運送事業者の99%以上が中小企業です[5]。輸送力の不足を埋める主役は中小の運送会社で、その会社の運転者の時間には上限がある、ということです。

運転者の時間を増やせない以上、減らせるのは運転以外の時間です。荷待ち・荷役の時間は荷主との取り組みが要りますが、事務所の書類の時間は自社で減らせます。私たちは、中小の運送会社がAIで最初に取り戻せるのは、配車担当・運行管理者・事務員が書類と転記に使っている時間だと考えています。

運送業の事務は「法定の記録」が多い:棚卸しの起点にする

運送業がほかの業種と違うのは、事務の仕事の多くが国土交通省の省令「貨物自動車運送事業輸送安全規則」で項目と保存期間まで決まっていることです[6]。ほかの業種では、業務の棚卸しは「誰が何をしているか」を聞き取るところから始めますが、運送業では法定の記録を並べるだけで、事務の骨格ができます。主な記録は次のとおりです[6]。

記録根拠(輸送安全規則)主な内容保存期間AIの役割(私たちの整理)
点呼の記録第7条点呼を行った者と受けた運転者等の氏名、車両、日時、方法、報告・確認・指示の内容1年記録そのものは対面または認定機器で。AIは記録簿の集計・検索の補助まで
業務の記録(運転日報)第8条業務の開始・終了の地点と日時、主な経過地点、距離、休憩、積載状況(8トン以上等)、荷待ち・荷役作業等の時間、事故・異常の概要1年運行記録計のデータと手書きの付記を突き合わせ、集計・月報化の下書き
運行記録計の記録第9条瞬間速度、運行距離、運行時間1年データの読み出しと異常値の抽出(運行管理者が確認)
事故の記録第9条の2事故の内容、原因、再発防止策など3年記録の整理と、指導資料への反映の下書き
運行指示書第9条の3運行の開始・終了の地点と日時、乗務員の氏名、経路と発着日時、注意箇所、休憩地点運行終了から1年荷主の指示や配車表からの転記の下書き(確認は運行管理者)
運転者等台帳第9条の5免許の番号・有効期限・種類、雇入れ日、事故歴、健康状態、指導・適性診断の受診状況、写真運転者でなくなった日から3年更新漏れの点検。個人情報が多く、外部のAIに入れない
指導・監督の記録第10条日時、場所、内容、行った者と受けた者3年指導資料の作成と記録の整理

2025年4月1日からは、業務の記録のうち荷待ち時間と荷役作業・附帯業務の記録義務の対象が、従来の「車両総重量8トン以上または最大積載量5トン以上」から全車両に広がりました[7]。荷主の都合で30分以上待機した場合の荷待ち時間、荷主との契約書に荷役作業等がすべて明記されている場合は合計1時間以上となった荷役作業等の時間と、荷主の確認が得られたかどうかを記録し、最低1年間保存します[7]。国土交通省は、この記録が待機時間料や積込料・取卸料を荷主から適正に収受する根拠になると説明しています[7]。

つまり、法定の記録は「残さなければいけないもの」であると同時に、「運賃交渉の材料」であり、「AIで集計すれば使えるデータ」でもあります。私たちは、運送業のAI導入は、この表の記録をどう残しているか(紙か、デジタコか、クラウドか)を確かめることから始めるのが最も早いと考えています。

AIに任せる仕事・任せない仕事:法定の判断、法定の記録、その周りの事務

運送業の事務を、法令上の性質で3つに分けました。分け方は私たちの整理で、法令で定められた区分ではありません。

区分例AIの扱い(私たちの考え)
① 法定の判断点呼(酒気帯び・健康状態の確認と指示)、運行管理者の運行の可否の判断、指導・監督、事故時の対応任せない。点呼は原則対面で、自動化できるのは国の認定機器による自動点呼だけ[8]。汎用の生成AIで代替できない
② 法定の記録業務の記録、運行指示書、運転者等台帳、事故の記録、指導の記録記録の項目と保存は規則どおり。AIは転記の下書き・集計・検索の補助に限り、内容の確認は人が行う
③ 法定でない事務電話・FAXの受注の転記、荷主への連絡文、請求書と運賃の計算の下書き、求人票、安全会議の資料、問い合わせの回答案任せやすい。最初に試す対象

③から始めて、②に広げ、①には入らない。この線引きを先に決めておくと、「AIで点呼を省けるのではないか」「配車をAIに決めさせてよいのか」という議論に時間を取られずに済みます。運行の安全に関わる判断は、会社として運行管理者が責任を持つ仕事です。

運送業でAIを使える業務:始めやすさ別の一覧

上の線引きをもとに、運送業でAIを使える業務を始めやすさで3段階に分けました(私たちの整理です)。

段階業務の例使うもの必要な準備始めやすさ
① 事務所の書類仕事荷主への連絡文(遅延・配車変更・運賃改定の案内)の下書き、電話・FAX受注の転記、請求書・運賃明細の下書き、安全会議や指導の資料づくり、求人票、法令や通達の要点の整理生成AI、音声の文字起こし入力してよい情報を決める社内ルール、荷主の書式の確認◎ 機械の追加なしで始められる
② 法定の記録をそろえて使う運行記録計と日報の突き合わせ、荷待ち・荷役時間の月次集計、運行指示書の転記の下書き、運転者等台帳の更新漏れの点検、事故・ヒヤリハットの記録の整理生成AI、文字の読み取り、運行管理・動態管理のクラウド記録の付け方(地点名・荷主名・作業名)をそろえる、紙の記録を表に入れる○ 記録をそろえる手間がかかる
③ 点呼・配車の専用システム自動点呼(認定機器)、配車計画や運行・労務管理のシステム、車両動態管理、原価管理国の認定を受けた自動点呼機器、業務効率化システム機器・システムへの投資、運行管理規程への明記、運転者への教育、助成・補助の確認△ 投資と手続きが必要

③は効果が大きい一方、機器やシステムの投資と、運行管理規程の整備などの手続きが要ります。私たちは、①で事務所の人がAIに慣れ、②で記録をそろえてから③を検討する順番をおすすめしています。②でそろえた記録は、③のシステムに入れるデータにそのままなります。

点呼はどこまで自動化できるか:認定機器による自動点呼

点呼は、運行の安全を確保するため原則として対面で行い、「対面による点呼と同等の効果を有するものとして国土交通大臣が定める方法」として、遠隔点呼と自動点呼が認められています[8]。自動点呼は、国土交通省の認定を受けた機器・システムを用いて、運行管理者等が作成した点呼予定に基づき、運転者等が運行管理者等の立ち会いなしに点呼を行う制度です[8]。根拠は令和5年国土交通省告示第266号で、認定を受けた業務前・業務後の自動点呼機器の一覧は国土交通省のページで公開されています[9]。

認定機器には、生体認証などで運転者を確実に識別して点呼を開始すること、アルコール検知器の測定結果と測定中の静止画・動画、体温・血圧の平時との差異、疾病・疲労・睡眠不足の申告、日常点検の結果を確認・記録すること、異常があれば運行管理者に通知して点呼を中断・中止すること、点呼結果を電磁的に記録して1年間保存し、CSV形式で出力できることなどが求められています[8]。事業者側には、運転者を映す撮影機器の設置、通信環境の確保、運行管理規程への明記と教育・指導、生体認証や体温・血圧の情報の取扱いについて事前に運転者の同意を得ることが遵守事項として示されています[8]。

ここで押さえておきたいのは、自動点呼は「AIが点呼する」のではなく、「国が要件を定めた機器で、運行管理者が予定を入力し、結果を確認する」仕組みだということです。ChatGPTのような汎用の生成AIで点呼を代替することはできません。自動点呼を検討するなら、認定機器の一覧[9]と、所属するトラック協会の助成[14]を確かめ、実施予定日の10日前までに管轄の運輸支局等へ届出書を提出する手続きを運行管理者と確認してください[8]。

配車AIの前にそろえるもの:制約と記録

配車や運行計画のシステムは、国の補助の対象にもなっている分野です(後述)。ただ、私たちは、配車のシステムを入れる前に、次の3つがそろっているかを確かめることをおすすめしています。

  • 制約がデータになっている:改善基準告示の拘束時間・休息期間・連続運転時間[2]、運転者ごとの免許の種類、車両ごとの積載量を、人の頭の中ではなく表に出しておく。
  • 荷待ち・荷役の時間が記録されている:2025年4月から全車両で記録の対象になった荷待ち時間と荷役作業等の時間[7]を、荷主別・納品先別に集計できる形で残しておく。配車の精度は、この実績データで決まります。
  • 荷主との契約が書面になっている:2025年4月1日施行の改正貨物自動車運送事業法で、運送契約の締結時に運送の役務の内容や対価を記載した書面の交付が義務になりました[12]。附帯業務の範囲と料金が書面で決まっていれば、配車の条件もはっきりします。

元請として他の運送事業者に運送を委託する場合は、真荷主から引き受けた1.5トン以上の貨物について、実運送事業者の名称や請負階層などを記載した実運送体制管理簿を作成し、運送の完了から1年間、営業所に据え置く必要があります[13]。決まった様式はなく、必要事項が記載されていれば既存の配車表も活用できます[13]。配車表を整えることが、そのまま法定の管理簿にもなるということです。

運送業の中小企業がAIを導入する5つの手順

次の手順は、公的に決められた方法ではなく、私たちがおすすめしている順番です。

手順やることできあがるもの
1. 法定の記録の残し方を確かめる上の「法定の記録」の表の7つについて、紙・デジタコ・クラウドのどれで残しているか、誰が転記しているか、月に何時間かかっているかを書き出す記録の一覧(棚卸しの土台)
2. 法定でない事務を書き出す受注の転記、荷主への連絡、請求・運賃計算、求人、会議資料など、配車担当・運行管理者・事務員が月に何時間使っているかを加える。兼務している人の仕事に印を付ける業務の一覧(業務台帳)
3. 事務所の仕事から1つ試す③の区分(法定でない事務)から1つ選び、期間を決めて試す。入力してよい情報のルールを先に決める試した結果(減った時間・困った点)
4. 記録の付け方をそろえる地点名・荷主名・作業名の呼び方、日報の項目をそろえ、紙の記録は表に入れる。荷待ち・荷役の時間を荷主別に集計できる形にする集計と交渉に使える記録
5. 点呼・配車のシステムを検討する記録がそろった段階で、認定機器による自動点呼や配車・労務管理のシステムを、助成・補助の条件と合わせて検討する。小さく試してから投資を決める投資の判断材料(試した結果と見積)

手順1を法定の記録から始めるのは、運送業では事務の骨格が規則で決まっているからです。中小機構の調査でも、AIの導入目的として最も多いのは業務効率化(87.0%)でした[1]。誰の、どの時間を減らしたいのかを最初に言葉にしておくと、試したあとの判断がしやすくなります。

手順4は地味ですが、効きます。同じ納品先を人によって違う名前で書いている、荷待ちの開始時刻の付け方が運転者ごとに違う、という状態では、人がまとめてもAIがまとめても荷主に示せる資料になりません。

入力してはいけない情報:運転者の個人情報と荷主の情報

運送業の記録には、個人情報が多く含まれます。運転者等台帳には免許の番号と有効期限、事故歴、健康状態、写真が載り[6]、自動点呼の記録にはアルコール検知の結果や体温・血圧が残ります[8]。個人情報保護委員会は、事業者が生成AIサービスに個人情報を含む内容を入力する場合、利用目的の達成に必要な範囲内であることを十分に確認し、入力した個人データが応答の出力以外の目的で取り扱われる場合は個人情報保護法に違反する可能性があるため、提供事業者が機械学習に利用しないことなどを十分に確認するよう求めています[18]。

私たちは、①運転者の個人情報(氏名と結び付く免許・健康・点呼の情報)、②荷主から預かった情報(納品先の個人名・住所、契約の運賃)、③事故や行政処分に関する情報は、社外の汎用AIに入力しない情報として先に決めておくことをおすすめします。試すときは、氏名を社員番号に、荷主名を記号に置き換えてから入力する、という手順にすると安全です。社内ルールの作り方は、別の記事「生成AIの社内ルールの作り方」で紹介しています。

よくあるつまずきと対策

運送業のAI導入で起きやすいつまずきを、対策とあわせて表にしました(私たちの整理です)。

つまずき起きること対策
配車の最適化から始める制約と実績のデータがなく、提案された配車が現場で使えない法定の記録と荷待ち・荷役の実績をそろえてから検討する
汎用AIで点呼を省こうとする点呼は対面か認定機器によるものしか認められず、法令違反になる[8]点呼は①法定の判断として人と認定機器に限る
運転者に使わせることから始める運転中は使えず、負担だけ増える事務所の人(配車・運行管理・事務)が先に使い、運転者には結果だけ渡す
運転者等台帳や荷主の情報をそのまま入力する免許番号・健康情報・納品先の個人情報が社外のサービスに渡る入力しない情報を決め、置き換えてから入力する
記録の付け方がばらばらのまま集計する荷主別の荷待ち時間が合わず、交渉の資料にならない地点名・荷主名・作業名をそろえてから集計する
減った時間を測らない効果が分からず、助成・補助を使う判断もできない試す前と後で、対象の仕事の時間を記録する

使える助成・補助と相談先(2026年10月18日時点)

運送業の中小企業がAI・デジタルの導入に使える公的な制度のうち、2026年10月18日に公式ページで受付中または要領が公開されていることを確認したものです。年度ごとに内容が変わり、予算の上限で早く終わることがあるため、申請前に必ず公式の最新の案内で確認してください。

制度実施対象・内容補助・助成の額受付
自動点呼機器導入促進助成事業(令和8年度)全日本トラック協会(申請は各都道府県トラック協会)会員の中小事業者が、国土交通省の認定を受けた業務前・業務後の自動点呼機器を2026年4月1日以降に契約または利用開始した場合。周辺機器・セットアップ費・契約期間中のサービス利用料を含む。国土交通省に受理された届出書の写しが必要[14]導入費用の一部、上限10万円(1事業者1台分)。域内にGマーク事業所がある事業者は2台分・上限20万円[14]ページに期間の記載なし。所属の協会に確認
被害者保護増進等事業費補助金(運行管理の高度化に対する支援、令和8年度)国土交通省デジタル式運行記録計、映像記録型ドライブレコーダーなど運行管理機器の導入。2026年4月1日〜2027年1月29日に購入・取付け・支払いまで完了したもの[15]取得経費の3分の1。保有車両10両未満の一般貨物・特定貨物の事業者が初めて導入する場合は2分の1。上限80万円(所定の車載器を含む場合120万円)[15]2026年7月31日〜2027年1月29日17時。申し込み順に審査[15]
中小物流事業者の労働生産性向上事業(令和7年度補正予算)2次公募国土交通省(執行団体を通じて)中小トラック運送事業者等が導入する業務効率化システム(配車計画、運行・労務管理など)、車両動態管理システム(業務効率化システム等と同時導入)、原価管理システム、テールゲートリフター等の設備、人材育成など[16]導入費用の2分の1または4分の1。申請額が予算額を超えた場合は交付されないことがある[16]2026年9月28日〜11月27日(予定)[16]
よろず支援拠点(AIアドバイザー)中小企業基盤整備機構国が全国に設置した無料の経営相談所。令和8年度に各拠点にAIアドバイザーが配置され、AIを活用できる業務の整理や導入に向けた準備を支援する[19]無料随時

ソフトウェアやクラウドの導入に使えるデジタル化・AI導入補助金などは、別の記事「中小企業のAI導入に使える補助金・公的支援まとめ」で整理しています。どの制度も、「何に使うか」が決まってから申請するほうが通りやすいと私たちは考えています。手順1〜4で記録と業務の一覧をつくっておくと、申請に必要な事業の説明もそのまま書けます。

始める前のチェック表

次の項目を確かめてから始めることをおすすめします(私たちのおすすめです)。

  • □ 点呼記録・業務記録・運行指示書・運転者等台帳など法定の記録を、何で(紙・デジタコ・クラウド)残しているか書き出した
  • □ 荷待ち時間・荷役作業等の時間を、全車両について記録している(2025年4月1日から対象)
  • □ 配車担当・運行管理者・事務員が、法定でない事務に月に何時間使っているかが分かる
  • □ 最初に試す業務を、法定でない事務から1つに絞った
  • □ 社外のAIに入力しない情報(運転者の免許・健康・点呼の情報、荷主の情報、事故の情報)を決めた
  • □ 点呼と配車の最終判断は運行管理者が行う、と社内で確認した
  • □ 地点名・荷主名・作業名の呼び方と、日報の項目をそろえた
  • □ 試す期間と、効果を測るもの(減った時間、転記ミスの件数など)を決めた
  • □ 自動点呼やシステムの投資の前に、助成・補助の条件と、トラック協会・よろず支援拠点に相談した

まとめ:法定の記録を起点に、事務所の時間を取り戻す

運送業の中小企業のAI導入は、業種の中で最も遅れています。導入率は9.7%で、ITとの差は35.5ポイントです[1]。一方で、運転者の拘束時間と時間外労働には上限があり[2]、2030年度に向けて輸送力の不足が見込まれています[4]。国は、荷待ち時間の記録の全車両への拡大、契約の書面化、物流効率化法の努力義務と、記録と書面で物流を変える方向に制度を整えています[7][10][12]。

配車の最適化や自動運転の前に、法定の記録の残し方を確かめ、法定でない事務で小さく試し、記録の付け方をそろえる。点呼と配車の判断はAIに任せない。遠回りに見えますが、この順番が最も確実だと私たちは考えています。Enbitoでは、AIインタビューで社員から業務を聞き取り、業務台帳をつくる業務棚卸しAI「縁SCAN」を提供しています。どの業務から始めるかを決める材料づくりから進めたい場合は、あわせてご覧ください。

よくある質問

Q.運送業の中小企業では、AIの導入はどのくらい進んでいますか?
A.中小機構の調査(2026年3月公表)では、運輸業、郵便業の中小企業のAI導入率は9.7%で、12の業種区分の中で最も低く、全体の20.4%を下回っています[1]。ITの導入率との差は35.5ポイントです[1]。運輸業の回答は31社で、数字は幅をもって読む必要があります。
Q.運送会社は、どの業務からAIを始めるのがよいですか?
A.荷主への連絡文、受注の転記、請求書・運賃明細の下書き、安全会議の資料など、法律で決まっていない事務所の仕事から始めることをおすすめします(私たちの考えです)。次に、業務の記録や荷待ち・荷役の時間などの法定の記録をそろえて集計に使い、自動点呼や配車のシステムはそのあとに検討する順番がおすすめです。
Q.点呼をAIで自動化できますか?
A.点呼は原則として対面で、自動化できるのは国土交通省の認定を受けた自動点呼機器による業務前・業務後の自動点呼だけです[8]。運行管理者が点呼予定を入力し、認定機器が生体認証・アルコール検知・体温や血圧の確認を行い、結果を運行管理者が確認します[8]。汎用の生成AIで点呼を代替することはできません。認定機器の導入には、全日本トラック協会の助成(上限10万円、Gマーク事業所がある場合は2台分・上限20万円)があります[14]。
Q.荷待ち時間の記録は、どの車両が対象ですか?
A.2025年4月1日から、業務の記録における荷待ち時間と荷役作業・附帯業務の記録義務の対象が全車両に広がりました[7]。荷主の都合で30分以上待機した場合の荷待ち時間、荷主との契約書に荷役作業等がすべて明記されている場合は合計1時間以上となった荷役作業等の時間と、荷主の確認が得られたかどうかを記録し、最低1年間保存します[7]。
Q.デジタコや配車システムの導入に使える補助金はありますか?
A.2026年10月18日時点では、国土交通省の被害者保護増進等事業費補助金(運行管理の高度化)がデジタル式運行記録計などを対象に取得経費の3分の1(保有車両10両未満で初めて導入する場合は2分の1)を補助し、2027年1月29日まで申し込み順に受け付けています[15]。配車計画や運行・労務管理のシステムは、中小物流事業者の労働生産性向上事業の2次公募(2026年9月28日〜11月27日予定)で導入費用の2分の1または4分の1が対象です[16]。いずれも予算の上限があるため、公式の最新の案内で確認してください。

参考・出典

  1. [1]独立行政法人中小企業基盤整備機構「中小企業のAI等の利活用に係る実態調査(2026年3月)報告書(表1 有効回答数、図45 業種別の導入状況、表3 導入目的、表8 阻害要因、図63〜67 業種別の支援ニーズ)」
  2. [2]厚生労働省「トラック運転者の改善基準告示(自動車運転者の長時間労働改善に向けたポータルサイト)」
  3. [3]国土交通省「持続可能な物流の実現に向けた検討会 最終取りまとめ(2023年8月)」
  4. [4]国土交通省「2030年度に向けた総合物流施策大綱に関する検討会 提言(令和8年3月3日)」
  5. [5]公益社団法人全日本トラック協会「日本のトラック輸送産業 現状と課題 2025」
  6. [6]e-Gov 法令検索(国土交通省令)「貨物自動車運送事業輸送安全規則(第7条 点呼等、第8条 業務の記録、第9条 運行記録計による記録、第9条の2 事故の記録、第9条の3 運行指示書による指示等、第9条の5 運転者等台帳、第10条 従業員に対する指導及び監督)」
  7. [7]国土交通省「令和7年4月1日から、全車両が記載対象になります:荷待時間や荷役作業・附帯業務の「業務記録」への記録義務の対象が、全車両に拡大」
  8. [8]国土交通省「遠隔点呼・自動点呼 解説パンフレット(令和7年11月発行)」
  9. [9]国土交通省「運行管理高度化ワーキンググループ(遠隔点呼、自動点呼の実施に関する情報・認定を受けた自動点呼機器一覧)」
  10. [10]国土交通省「物流効率化法について(荷主・物流事業者の皆様へ)」
  11. [11]国土交通省「5分でわかる物流効率化法の改正のポイント(「物流効率化法」理解促進ポータルサイト)」
  12. [12]国土交通省「改正貨物自動車運送事業法(令和7年4月1日施行)について」
  13. [13]国土交通省「改正貨物自動車運送事業法 Q&A(令和8年3月31日時点)」
  14. [14]公益社団法人全日本トラック協会「令和8年度 自動点呼機器導入促進助成事業について」
  15. [15]国土交通省「令和8年度 被害者保護増進等事業費補助金 自動車運送事業の安全総合対策事業の部(運行管理の高度化に対する支援)公募要領(令和8年7月28日)」
  16. [16]国土交通省「報道発表資料:「中小物流事業者の労働生産性向上事業(テールゲートリフター等導入等支援)」の2次公募を実施します(令和8年9月14日)」
  17. [17]中小企業庁「2026年版 小規模企業白書(HTML版)第2部第1章第2節 小規模事業者の経営リテラシー向上(第2-1-48図 社内ノウハウの蓄積・共有の取組状況)」
  18. [18]個人情報保護委員会「生成AIサービスの利用に関する注意喚起等」
  19. [19]よろず支援拠点全国本部(中小企業基盤整備機構)「よろず支援拠点・生産性向上支援センターとは」

制度・数値は2026.10.18時点で各公式情報を確認したものです。補助金・助成金などは公募回ごとに内容が変わるため、申請の前に必ず最新の公式情報をご確認ください。

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中胡 翔太郎株式会社Enbito 代表取締役

広島県出身。大手日系事業会社で生成AIを実際の業務に組み込み、大手外資系コンサルティングファームで企業の業務改革を支援。個人事業として30社以上の企業・事業者の立ち上げと成長に伴走。現在は株式会社Enbitoの代表として、地方の中小企業のAI活用支援・業務改善に取り組んでいます。

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