中小企業の業務改善にAIを使うには|効果が出やすい業務・出にくい業務と、対象業務の選び方【公的調査のデータ】
業務改善にAIを使いたいが、どの業務に使えば効果が出るのか分からない。公的な調査のデータで「効果が出やすい業務・出にくい業務」を確かめ、自社の業務から対象を選ぶ評価表と、効果の測り方を整理しました。
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この記事の要点
- AIを導入した中小企業のうち、部門ごとに「導入して成果を上げている」と答えた割合は、総務・管理部門が68.3%で最も高く、営業・販売・サービス部門60.3%、経営・企画部門58.5%、製造・生産部門34.9%の順でした[1]。事務や文書の仕事から始めるほうが、成果につながりやすいと読み取れます。
- 反対に、AIを入れても効率化が難しいと感じる業務は「人の判断が必要な業務」が67.1%で最も多く、「社内調整・意思決定など属人的な業務」33.3%、「経営判断や戦略立案に関する業務」31.3%が続きます[1]。判断そのものをAIに任せようとすると、効果が出にくくなります。
- AIを活用していない中小企業の理由は「活用する業務がイメージできていない」が63.4%で最多です[2]。ツールを探す前に、自社の業務を書き出して、対象の業務を1つ決めることが業務改善の出発点だと私たちは考えています。
- 対象の業務は「回数・時間・手順の決まり具合・材料のそろい具合・まちがえたときの影響」の5つで点数をつけて選び、AIを使う前に「やめる・減らす・そろえる」の見直しを済ませる順番をおすすめします(私たちの考えです)。
ガイドこのテーマの全体像は中小企業のAI導入ガイド
「業務改善にAIを使えと言われるが、うちのどの仕事に使えばよいのか分からない」。中小企業の経営者や管理部門の方から、よく聞く悩みです。AIの使い道を紹介する記事はたくさんありますが、自社の業務に当てはめようとすると、どれから手をつければよいかで止まってしまいます。
この記事では、中小企業が業務改善にAIを使うときの「業務の選び方」を整理します。まず公的な調査のデータで、効果が出やすい業務と出にくい業務を確かめます。そのうえで、自社の業務から対象を選ぶ評価表、AIを使う前にやっておきたい見直し、効果の測り方、最初の1か月の進め方を順に説明します。数字は、中小企業基盤整備機構(中小機構)・中小企業庁・総務省・個人情報保護委員会の公表資料を2026年10月7日に原本で確認したものだけを載せています。私たちの考えやおすすめは、そうと分かるように書いています。
なお、AI導入の全体像(何から始めるか・費用・補助金・社内ルール・相談先)は「中小企業のAI導入ガイド」の記事で扱っています。この記事は、その中の「どの業務に使うか」にしぼった内容です。
業務改善にAIを使うとは:仕事の一部を「下書き」と「整理」に置き換えること
業務改善は、いまの仕事のやり方を見直して、ムダな手間やミスを減らす取り組みです。そこにAIを使うというのは、仕事を丸ごとAIに任せることではなく、仕事の中の「下書きをつくる」「情報を整理する」「候補を出す」といった一部の作業をAIに置き換えることだと、私たちは考えています。
中小機構が2025年11〜12月に行った調査(有効回答1,668社)では、AIを導入している中小企業は20.4%で、導入している企業の目的は「業務効率化/作業時間の短縮」が87.0%と最も多くなっています[1]。使われているAIは「生成AI」が82.6%、次いで「音声認識・音声対話AI」が29.8%でした[1]。つまり、いま中小企業で進んでいるAI活用の中心は、文章をつくる・まとめる・聞き取った内容を文字にする、といった身近な作業の効率化です。
実際に、導入した企業の83.2%が「業務効率化/作業時間の短縮」の効果があったと答えています[1]。一方で、同じ調査は「どの部門で成果が出ているか」「どんな業務は難しいか」に、はっきりした差があることも示しています。次の2つの章で、その差を見ていきます。
データで見る:AIの効果が出やすい業務
中小機構の調査では、AIを導入している企業に、部門ごとの導入状況と効果を聞いています。下の表は、その結果を部門別に並べたものです[1]。
| 部門 | 導入して成果を上げている割合 | 「効果があった」の割合が高い項目(上位3つ) |
|---|---|---|
| 総務・管理部門(バックオフィス) | 68.3% | 業務効率化/作業時間の短縮 81.6%、人手不足対応 73.0%、品質向上 72.9% |
| 営業・販売・サービス・アフターサービス部門 | 60.3% | 品質向上 78.7%、業務効率化/作業時間の短縮 73.7%、売上拡大・顧客獲得 73.3% |
| 経営・企画部門 | 58.5% | 品質向上 83.1%、付加価値創出 82.7%、業務効率化/作業時間の短縮 82.6% |
| 製造・生産部門(開発、調達、在庫管理などを含む) | 34.9% | 品質向上 72.5%、業務効率化/作業時間の短縮 60.9%、付加価値創出 59.4% |
「導入して成果を上げている割合」は、AIを導入している企業のうち、その部門について「一定の成果を上げている」「一定の成果を上げ、さらなる拡張を検討中」と答えた割合の合計です。効果の割合は、その部門でAIを導入している企業が「効果があった」と答えた割合です[1]。
この表から読み取れることは3つあります(ここからは私たちの読み方です)。1つ目は、総務・経理・人事などの事務の仕事が、いちばん成果につながりやすいこと。総務・管理部門では「人手不足対応」に効果があったという答えも7割を超えています。2つ目は、営業や経営・企画では「時間が減る」だけでなく「質が上がる」という効果が大きいこと。提案書や企画書の下書き、情報の整理にAIを使うと、考える材料が増えるためだと考えられます。3つ目は、製造・生産の現場は、成果を上げている割合がほかの部門の半分ほどにとどまること。報告書も、製造・生産部門では効果の現れ方が全体的にやや低い傾向があるとしています[1]。
ほかの公的な調査でも、同じ傾向が出ています。2026年版中小企業白書の概要によると、AI活用に取り組んだ中小企業のうち、AIを「活用している」と答えた割合は、バックオフィス部門73.4%、営業・販売・顧客対応部門68.2%、製造・生産管理・物流部門57.2%でした[2]。
作業の種類で見ると、どうでしょうか。総務省の令和8年版情報通信白書は、日本の企業(中小企業に限らない調査です)について、生成AIの活用は「議事録・メール作成補助」が約7割と最も高く、次に「営業・販売」が約6割、「社内ヘルプデスク」が約5割と続き、導入効果を実感すると答えた割合は「議事録・メール作成補助」が約7割で、ほかの類型に比べて顕著に高かったとしています[3]。
まとめると、公的なデータが示す「効果が出やすい業務」は、事務の部門にある、文章や記録を扱う仕事です。議事録、メールや文書の下書き、社内の問い合わせへの回答などが、最初の候補になります。
データで見る:AIの効果が出にくい業務
同じ中小機構の調査では、AIを導入したあとも「効率化が難しい」と感じる業務を聞いています[1]。
| 効率化が難しいと感じる業務 | 割合(複数回答) |
|---|---|
| 人の判断が必要な業務(営業提案、顧客折衝など) | 67.1% |
| 社内調整・意思決定など属人的な業務 | 33.3% |
| 経営判断や戦略立案に関する業務 | 31.3% |
上位3つは、どれも「人が判断する」「人と人が話して決める」仕事です。報告書は、コミュニケーションを要する業務への導入は難しい状況がうかがえるとしています[1]。
ここで気をつけたいのは、営業や経営・企画は、前の章では「効果が出やすい」側に入っていたことです。矛盾しているように見えますが、私たちは次のように考えています。営業や企画の仕事は、「材料を集めて整理し、下書きをつくる作業」と「相手に合わせて判断し、決める仕事」に分けられます。AIの効果が出やすいのは前者で、後者はAIを入れても人の仕事として残ります。同じ部門の中でも、仕事を作業の単位まで分けて見ないと、AIに向く部分が見つかりません。
総務省の白書も、AIの活用で先進的な取り組みを進める企業は、業務プロセスを見直すときに人間とAIの役割分担の設計を重要視し、どのタスクでAIを人間の思考や判断の補助として用い、どのタスクをAIに自律的に実行させるかを検討しているとしています[3]。会社の大きさにかかわらず、「どこまでをAIに任せ、どこからを人が決めるか」を先に決めることが、効果を出す前提になります。
もう一つ、AIがあまり得意としていない効果があります。同じ調査で、導入の効果として「エラー・ミスの軽減」を挙げた割合は、AIがITツールより18.4ポイント低くなっています[1]。会計ソフトや勤怠管理のようなITツールは、決まった計算を決まったとおりに行うのでミスを減らしやすいのに対し、生成AIの答えには不正確な内容が含まれることがあるためだと私たちは考えています[4]。「ミスをなくしたい」が目的の業務は、AIよりも、入力の仕組みやITツールの見直しのほうが合う場合があります。
AIを使う前に:「やめる・減らす・そろえる」を先に済ませる
AIを活用していない中小企業に理由を聞くと、「活用する業務がイメージできていない」が63.4%で最も多く、「活用を推進する人材が不足している」40.0%、「社内ルール・ガイドラインが整備されていない」26.2%が続きます。「必要な予算を確保できない」は13.8%でした[2]。お金よりも先に、「どの業務に使うか」で止まっている会社が多いということです。
また、中小機構の調査では、ITツールを導入している企業でも、業務全体に占める手作業の割合は「60〜79%」が31.5%で最も多く、「80%以上」の20.2%と合わせると、半数を超える企業で手作業のほうが多い状態でした[1]。そして、手作業の割合が高い企業ほどAIの導入率は低く、「大部分がIT化されている」企業の56.8%に対し、「ほとんどが手作業である」企業は26.7%でした[1]。
この数字から、私たちは「紙や口頭で回っている仕事には、そのままではAIを当てはめにくい」と読んでいます。AIに渡す材料(文書・データ・録音)がそろっていないからです。そこで、AIを使う前に、次の3つの見直しを済ませておくことをおすすめします(私たちの考えです)。
- やめる:誰も読んでいない報告書、二重に付けている記録、目的が分からなくなった確認作業をやめる。やめられる仕事にAIを使う必要はありません。
- 減らす:回数や宛先、項目を減らす。毎日の報告を週1回にする、項目を半分にするなど。
- そろえる:書式・置き場所・呼び方をそろえる。人によって書き方が違う日報や、あちこちに散らばった資料は、そろえてからAIに渡すと結果が安定します。
この3つは、AIを使わなくても効果が出る業務改善です。そのうえで残った「必要だが、時間がかかっている仕事」が、AIを使う候補になります。業務の書き出し方は「業務棚卸しのやり方」の記事で説明しています。
対象の業務を選ぶ評価表:5つの観点で点数をつける
書き出した業務の中から、最初にAIを使う業務を1つ選びます。私たちは、次の5つの観点で点数をつけて比べる方法をおすすめしています(私たちが整理した評価表です。公的な基準ではありません)。
| 観点 | 3点 | 2点 | 1点 |
|---|---|---|---|
| 回数(どのくらい発生するか) | 毎日〜毎週 | 毎月 | 年に数回 |
| 時間(1回にかかる時間×人数) | 合わせて月10時間以上 | 月3〜10時間 | 月3時間未満 |
| 手順の決まり具合 | 手順や書式がほぼ決まっている | 人によって少し違う | 毎回やり方が違う |
| 材料のそろい具合 | 文書・データ・録音などがすでにある | 一部は紙や口頭 | ほとんど頭の中にある |
| まちがえたときの影響 | 社内で確認して直せる | お客様に届くが、送る前に確認できる | お金・契約・安全に直接かかわる |
5つの点数を足して、合計が高い業務から始めます。時間の区切り(月10時間など)は目安なので、自社の規模に合わせて変えてください。
たとえば、次のように比べます(説明のための例です)。「週1回の営業会議の議事録づくり」は、回数3・時間2・手順3・材料3(録音がある)・影響3で合計14点。「見積書の作成」は、回数3・時間3・手順2・材料2・影響1(金額にかかわる)で合計11点。「クレームへの対応」は、回数2・時間2・手順1・材料1・影響1で合計7点。この場合は、議事録づくりから始め、見積書は「過去の見積もりを探して下書きをつくるところまで」にしぼって次に試す、という順番になります。
点数が低い業務は、AIに向かないというより「まだ準備ができていない」業務です。手順を決める、材料を残すようにする、といった見直しをしてから、あらためて点数をつけ直してください。「まちがえたときの影響」が1点の業務は、合計が高くても最初の1つには選ばないことをおすすめします。
部門別:最初に試しやすい作業と、先に整えておくこと
評価表で点数が高くなりやすい作業を、部門別に並べました。「先に整えておくこと」ができていない場合は、そちらを先に済ませてください(私たちの整理です)。
| 部門 | 最初に試しやすい作業 | 先に整えておくこと | 人が必ず確認すること |
|---|---|---|---|
| 総務・人事・経理 | 社内のお知らせ・規程の下書き、会議の議事録、社員からのよくある質問への回答案、求人票の下書き | 規程や手続きの資料を1か所に集める。議事録の書式を決める | 規程や法令に合っているか、数字と日付 |
| 営業・販売・顧客対応 | お礼や案内のメールの下書き、商談の記録の要約、提案書の構成案、よくある問い合わせへの回答案 | 過去の提案書・回答例を整理する。商談の記録を残す習慣をつくる | 価格・納期・条件、相手に合わせた言い回し |
| 経営・企画 | 会議資料の構成案、長い資料や公的な文書の要約、考えの整理の相手役、計画書の下書き | 判断の材料になる数字を一覧にする | 要約が元の資料と合っているか、最終の判断 |
| 製造・生産・現場 | 作業日報の整理、手順書・点検表の下書き、不具合の記録の分類 | 日報や記録の項目をそろえる。紙の記録をデータにする | 現場の実際と合っているか、安全にかかわる手順 |
製造・生産の現場では、外観検査や設備の見守りのように専用のAIを使う方法もありますが、準備するデータや費用が大きくなります。まずは現場のまわりにある事務の作業(日報・手順書・記録)から始めるのが取り組みやすいと私たちは考えています。製造業での進め方は「製造業の中小企業のAI導入」の記事で詳しく扱っています。
効果の測り方:始める前に「いまの時間」を記録する
業務改善にAIを使っても、「なんとなく楽になった気がする」で終わると、続けるかどうかを決められません。私たちは、始める前に次の3つを記録しておくことをおすすめします(私たちの考えです)。
- いまの時間:その業務に、1回あたり何分かかっているか。月に何回あるか。2〜3回、実際に計る。
- いまの困りごと:遅れ、もれ、やり直し、特定の人しかできない、など。数えられるものは数える。
- 目標:1回あたり何分にしたいか。困りごとをどこまで減らしたいか。
試したあとは、同じやり方で計り直します。このとき、AIに指示を出す時間と、AIの出力を人が確認して直す時間も必ず含めてください。下書きは5分でできても、確認と手直しに30分かかるなら、改善にはなっていません。
個人情報保護委員会は、生成AIサービスでは、入力した内容に対する応答結果に不正確な内容が含まれることがあるとして、注意を呼びかけています[4]。確認の時間をゼロにすることは考えず、「確認を含めても短くなるか」で判断するのがおすすめです。
数字の例を挙げます(説明のための計算例です)。週1回の会議の議事録づくりに、これまで1回90分かかっていたとします。AIで下書きをつくり、確認と手直しを含めて1回40分になれば、1回あたり50分、月4回で約200分(3時間あまり)の短縮です。この時間を何に使うか(お客様への連絡、後輩への指導など)まで決めておくと、業務改善の成果が見えやすくなります。
AIに入力してよい情報を先に決める
業務でAIを使い始める前に、入力してよい情報と、入力してはいけない情報を決めておく必要があります。個人情報保護委員会は、事業者が生成AIサービスに個人情報を含む内容を入力する場合には、その個人情報の利用目的を達成するために必要な範囲内であることを十分に確認すること、また、入力した個人データが応答結果の出力以外の目的で取り扱われる場合は個人情報保護法の規定に違反することとなる可能性があるため、サービスを提供する事業者がその個人データを機械学習に利用しないことなどを十分に確認することを求めています[4]。
最初の業務を選ぶときは、お客様や従業員の個人情報、取引先との契約の内容などを入力しなくても進められる業務を選ぶと、始めやすくなります(私たちの考えです)。社内ルールの決め方は「生成AIの社内ルールの作り方」の記事で説明しています。
最初の1か月の進め方
ここまでの内容を、1か月の流れにまとめます。期間は目安です(私たちのおすすめです)。
| 時期 | やること | できあがるもの |
|---|---|---|
| 1週目 | 1つの部門または1人の業務を書き出す。「やめる・減らす・そろえる」ができる仕事に印をつける | 業務の一覧表 |
| 2週目 | 残った業務に評価表で点数をつけ、対象を1つ決める。いまの時間と困りごとを記録し、目標を決める。入力してよい情報を決める | 対象の業務、いまの時間の記録、目標 |
| 3週目 | 担当者1〜2人で試す。うまくいった指示の出し方と、確認するところをメモする | 指示の例、確認の手順 |
| 4週目 | 時間を計り直し、目標と比べる。続ける・やり方を直す・やめる、を決める。続けるなら手順を1枚にまとめ、次の業務を選ぶ | 結果の記録、手順のメモ |
「やめる」という結論が出てもかまいません。合わない業務が分かったことも成果で、評価表の点数のつけ方を見直す材料になります。中小機構の調査では、AIを導入したあとの運用の課題として「従業員による活用が進まない」が28.9%挙がっています[1]。最初から全員に広げず、1つの業務で「短くなった」という結果を出してから広げるほうが、使われないままになることを防ぎやすいと私たちは考えています。
始める前のチェック表
| 確かめること | できていれば |
|---|---|
| 業務の書き出し | 対象の部門または担当者の業務を、回数と時間つきで書き出した |
| AIの前の見直し | やめる仕事・減らす仕事・書式や置き場所をそろえる仕事を決めた |
| 対象の業務 | 評価表で点数をつけ、最初の業務を1つにしぼった |
| AIと人の分担 | AIに任せる作業(下書き・整理)と、人が決めること(判断・最終確認)を分けた |
| いまの数字 | 1回あたりの時間と月の回数を記録し、目標を決めた |
| 入力のルール | 入力してよい情報・いけない情報を決め、担当者に伝えた |
| 確認の手順 | AIの出力を、誰が、何と照らして確認するかを決めた |
| ふり返りの日 | 1か月後に時間を計り直し、続けるかどうかを決める日を決めた |
まとめ:AIを選ぶ前に、業務を選ぶ
公的な調査が示しているのは、AIの効果は「事務の部門にある、文章や記録を扱う仕事」で出やすく、「人が判断し、人と話して決める仕事」では出にくいということです[1][3]。そして、AIを使っていない会社の多くは、費用ではなく「使う業務が決まっていない」ことで止まっています[2]。
だからこそ、私たちは「どのAIを使うか」より先に「どの業務に使うか」を決める順番をおすすめします。業務を書き出し、やめる・減らす・そろえるを済ませ、評価表で1つ選び、時間を計って確かめる。この流れは、AIを使わない業務改善にもそのまま使えます。
私たちEnbitoは、業務の棚卸しから始める業務改善とAI活用の支援を行っており、縁SCANは社員への聞き取りをもとに業務を見える化するための道具です。費用の考え方は「中小企業のAI導入の費用はいくら?」の記事で、うまくいかないときの原因は「中小企業のAI導入が失敗する原因と対策」の記事で整理しています。
よくある質問
- Q.中小企業が業務改善にAIを使うなら、どの業務から始めるのがよいですか?
- A.総務・経理・人事などの事務の部門にある、文章や記録を扱う仕事(議事録、メールや文書の下書き、社内のよくある質問への回答案など)から始めるのがおすすめです。中小機構の調査では、AIを導入している中小企業のうち、導入して成果を上げていると答えた割合は総務・管理部門が68.3%で最も高く、製造・生産部門は34.9%でした[1]。自社で選ぶときは、回数・時間・手順の決まり具合・材料のそろい具合・まちがえたときの影響の5つで点数をつけて比べる方法をおすすめしています(私たちの考えです)。
- Q.AIを使っても効果が出にくいのは、どんな業務ですか?
- A.人の判断や、人と人のやり取りが中心の業務です。中小機構の調査では、AIを導入したあとも効率化が難しいと感じる業務は「人の判断が必要な業務(営業提案、顧客折衝など)」が67.1%で最も多く、「社内調整・意思決定など属人的な業務」33.3%、「経営判断や戦略立案に関する業務」31.3%が続きました[1]。こうした業務では、判断そのものではなく、判断の前の「材料を集めて整理する作業」にAIを使うのがおすすめです(私たちの考えです)。
- Q.業務改善とAI導入は、どちらを先にやるべきですか?
- A.業務の見直しを先にすることをおすすめします(私たちの考えです)。やめられる仕事をやめ、回数や項目を減らし、書式や置き場所をそろえてから、残った仕事にAIを使う順番です。中小機構の調査では、手作業の割合が高い企業ほどAIの導入率が低く、「大部分がIT化されている」企業の56.8%に対し、「ほとんどが手作業である」企業は26.7%でした[1]。AIに渡す文書やデータがそろっていることが、効果を出す前提になります。
- Q.AIで業務改善の効果が出たかどうかは、どう測ればよいですか?
- A.始める前に、その業務の1回あたりの時間と月の回数を記録し、試したあとに同じやり方で計り直します。AIに指示を出す時間と、出力を人が確認して直す時間も含めて比べてください(私たちのおすすめです)。生成AIの応答結果には不正確な内容が含まれることがあるため[4]、確認の時間をなくすことは前提にしないほうが安全です。
- Q.AIで仕事のミスを減らすことはできますか?
- A.できる場合もありますが、AIがとくに得意とする効果ではありません。中小機構の調査では、導入の効果として「エラー・ミスの軽減」を挙げた割合は、AIがITツールより18.4ポイント低い結果でした[1]。ミスを減らすことが目的なら、入力の仕組みやITツールの見直しのほうが合う場合があります。AIは、下書きづくりや情報の整理で時間を短くする使い方から始めるのがおすすめです(私たちの考えです)。
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参考・出典
- [1]独立行政法人中小企業基盤整備機構「中小企業のAI等の利活用に係る実態調査(2026年3月)報告書(PDF。図13〜15、図18・19、図23、図26〜29、図31・32、図79)」
- [2]中小企業庁「2026年版 中小企業白書・小規模企業白書の概要(2026年4月。PDF)21ページ「中小企業におけるAI活用は一定程度進む」」
- [3]総務省「令和8年版 情報通信白書 第Ⅰ部第2章第1節「企業におけるAI利用の現状」(PDF。図表Ⅰ-2-1-7ほか)」
- [4]個人情報保護委員会「生成AIサービスの利用に関する注意喚起等について(令和5年6月2日)」
制度・数値は2026.10.07時点で各公式情報を確認したものです。補助金・助成金などは公募回ごとに内容が変わるため、申請の前に必ず最新の公式情報をご確認ください。

Author
中胡 翔太郎株式会社Enbito 代表取締役
広島県出身。大手日系事業会社で生成AIを実際の業務に組み込み、大手外資系コンサルティングファームで企業の業務改革を支援。個人事業として30社以上の企業・事業者の立ち上げと成長に伴走。現在は株式会社Enbitoの代表として、地方の中小企業のAI活用支援・業務改善に取り組んでいます。
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