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業務効率化公開

業務棚卸しのやり方|中小企業が業務を見える化する6つの手順と台帳の項目

AIやITツールを入れる前に、まず社内の仕事を書き出す。中小企業白書のデータをもとに、業務棚卸しがなぜ効くのか、どんな手順で、どんな項目を記録すればよいのかをまとめました。

約9分で読めます

この記事の要点

  • 業務棚卸しは、社内の仕事を「誰が・何を・どれくらいの時間で」行っているかを書き出し、見える化する取り組みです。
  • 2023年版中小企業白書では、業務の棚卸しができている企業ほど、デジタル化の効果を実感している割合が高いと分析されています[1]。
  • 一方で、従業員20人以下の企業で棚卸しが「できている」と答えた割合は約3割にとどまり、「十分にできている」企業はどの規模でも10%未満です[1]。
  • 進め方の基本は、①目的と範囲を決める → ②業務を階層で書き出す → ③現場に聞く → ④時間と頻度を記録する → ⑤集計して課題を見つける → ⑥優先順位をつける、の6ステップです(私たちのおすすめ)。

「AIを使って業務を効率化したいが、どの仕事から手をつければよいか分からない」。こうした悩みの出発点になるのが、業務棚卸しです。

2023年版中小企業白書は、経済産業省「DX推進指標」を参考に、デジタル化を進めるための戦略的な取組の一つとして「業務の棚卸し」を取り上げ、その実施状況と効果を分析しています[1]。この記事では、その結果を紹介したうえで、中小企業が自社で業務棚卸しを進める手順と、記録しておきたい項目をまとめます。

業務棚卸しとは

業務棚卸しとは、社内で行われている仕事を一つずつ書き出し、担当者・手順・かかっている時間などを整理して、全体を見える化する取り組みです。在庫の棚卸しで商品の数を数えるように、仕事の「在庫」を数え直すイメージです。

中小機構のJ-Net21では、「見える化」を、仕事における問題を常に見えるようにすることで、問題が発生してもすぐに解決でき、さらに問題が発生しにくい環境を実現するための取り組みと説明しています[4]。業務棚卸しは、この見える化を事務・営業・現場の仕事全体に広げるための土台だと私たちは考えています。

データで見る:棚卸しができている企業ほど効果を実感

2023年版中小企業白書の分析のポイントは、次のとおりです[1]。

  • 従業員21人以上の企業では、業務の棚卸しが「十分にできている」または「ある程度できている」企業が約5割。一方、従業員20人以下の企業では約3割にとどまる[1]
  • 「十分にできている」と答えた企業の割合は、いずれの従業員規模でも10%を下回る[1]
  • 業務の棚卸しができている企業は、できていない企業に比べて、デジタル化の効果を実感している割合が高い。特に「十分にできている」企業では「十分に効果があった」と答えた割合が高い[1]
  • デジタル化の取組段階が進んでいる企業ほど、ビジョン・目標の設定や業務の棚卸しなどを実施している割合が高い[1]

白書はこの結果から、デジタル化を進める際には既存の業務の棚卸しを十分に行うことの重要性が示唆されるとしています[1]。また、AIやRPAなどを本格導入する前に既存業務の棚卸しと現場の改善活動を行い、「デジタル化でできること」を明確にした企業の事例も紹介されています[1]。

同じ白書では、従業員20人以下の企業は、デジタル化が進まない要因として「必要性を感じていない」「どのように推進してよいか分からない」と答える割合が、規模の大きい企業より高いことも示されています[1]。何から始めればよいか分からないときこそ、まず自社の仕事を書き出すことが第一歩になります。

AI導入の前に棚卸しが必要な理由

中小機構が2026年3月に公表した調査では、中小企業のAI導入率は20.4%で、AIの導入目的は「業務効率化/作業時間の短縮」が87.0%と最多でした[2]。業務分野別の導入率は、総務・管理部門が68.3%で最も高く、営業・販売・サービス部門(60.3%)、経営・企画部門(58.5%)が続きます[2]。

業務効率化を目的にするなら、「どの業務に、どれだけ時間がかかっているか」が分かっていなければ、効果の大きい場所を選べません。私たちは、AIツールを選ぶ前に業務棚卸しを行うことで、次のようなことが分かると考えています。

  • 時間が多くかかっている業務(効率化したときの効果が大きい業務)
  • 特定の人しかできない業務(属人化している業務)
  • 同じ情報を何度も転記している、紙とExcelで二重管理しているなどのムダ
  • 文章づくり・要約・問い合わせ対応など、生成AIで補助しやすい業務

業務棚卸しの6つの手順(私たちのおすすめ)

ここからは、中小企業が自社で業務棚卸しを進めるための手順です。私たちが現場で大切だと考えている進め方で、公的に定められた方法ではありません。

手順1:目的と範囲を決める

「AIで効率化する業務を選びたい」「特定の人に集中している仕事を分散したい」「引き継ぎに備えたい」など、何のために棚卸しをするのかを最初に決めます。目的によって、記録する項目や細かさが変わるからです。

最初から全社を対象にすると負担が大きくなります。まずは総務・経理など1つの部門や、困りごとの多いチームから始め、やり方を固めてから広げるのがおすすめです。

手順2:業務を「大・中・小」の階層で書き出す

業務は、大分類(例:経理)→ 中分類(例:請求)→ 小分類(例:請求書の作成・送付)のように、階層で書き出すと整理しやすくなります。小分類は「〜を作成する」「〜を確認する」のように、一つの作業として区切れる単位にそろえます。

抜け漏れを防ぐ参考として、厚生労働省の「職業能力評価基準」を使う方法もあります。仕事をこなすために必要な知識・技術・技能と職務行動例を、業種別・職種別に整理したもので、業種横断的な事務系職種のほか、ものづくりからサービス業まで幅広い業種で整備され(策定業種一覧は56業種)、各企業でカスタマイズして活用するよう案内されています[3]。自社の業種の基準を眺めると、書き出し漏れに気づきやすくなります。

手順3:現場の担当者に聞く

経営者や管理職が思い浮かべる業務と、担当者が実際にしている業務は、ずれていることがよくあります。担当者本人に「毎日・毎週・毎月していること」「年に数回だけ発生すること」「困っていること」を聞き、書き出した一覧に足していきます。

J-Net21でも、数値はムダや異常を知らせる警報でしかなく、その原因は現場に行かないと見えない、という見える化のポイントが紹介されています[4]。聞き取りは、現場の人が普段使っている言葉で記録するのがコツです。

手順4:時間・頻度・担当者を記録する

書き出した業務ごとに、次のような項目を記録します。これが「業務台帳(業務一覧)」になります。

項目記録する内容の例
業務名(大・中・小)経理/請求/請求書の作成・送付
担当者主担当と、代わりにできる人がいるか
頻度毎日・毎週・毎月・年に数回
1回あたりの時間おおよその分数(まずは目安で十分)
使っている道具紙、Excel、会計ソフト、メールなど
インプットとアウトプット何を受け取り、何を作って誰に渡すか
困りごと時間がかかる、ミスが出やすい、その人しか分からない など

時間は最初から正確でなくてかまいません。「1回あたりの時間 × 年間の回数」で年間の時間を出すと、どの業務に時間が集まっているかが見えてきます。

手順5:集計して課題を見つける

台帳ができたら、年間の時間が多い順に並べ替え、次の観点で印をつけます。

  • 時間が多い:効率化したときの効果が大きい
  • 代わりにできる人がいない:属人化していて、休みや退職のときに止まりやすい
  • 転記・二重入力がある:システムの連携やAIで減らせる可能性がある
  • 判断が少なく、手順が決まっている:自動化やAIによる補助の候補になりやすい

手順6:効果と取り組みやすさで優先順位をつける

印をつけた業務を「効果の大きさ」と「取り組みやすさ」の2軸で並べ、効果が大きく、今のやり方を大きく変えずに試せるものから着手します。1つの業務で小さく試し、うまくいったら次の業務に広げるのがおすすめです。

業務棚卸しでつまずきやすいポイント

  • 細かくしすぎて終わらない:最初は「小分類」で止め、手順の細部はマニュアル化の段階で書く
  • 一度で完璧を目指す:最初の版は7割の完成度で十分。見直しながら更新する
  • 担当者が「評価される」と身構える:目的は仕事を減らすことであり、個人の評価ではないと最初に伝える
  • 作って終わりになる:年に1回など、見直すタイミングを決めておく

いずれも、私たちが業務の見える化を進めるうえで気をつけている点です。

自社だけで進めるのが難しいときは

国が全国に設置している「よろず支援拠点」では、何度でも無料で経営相談ができます[5]。令和8年度は各拠点に「AIアドバイザー」が配置され、業務内容や課題を聞きながら、AIを活用できる業務の整理などをサポートしています[5]。

Enbitoでも、経営者と現場への聞き取りをもとに業務の流れを整理する「AX Discovery」や、AIインタビューで社員から業務を聞き取って業務台帳をつくる業務棚卸しAI「縁SCAN」を提供しています。業務を書き出すところから一緒に進めたい場合は、あわせてご覧ください。

よくある質問

Q.業務棚卸しと業務の見える化は何が違いますか?
A.業務の見える化は、仕事の状況や問題を誰でも分かるようにする取り組み全体を指します[4]。業務棚卸しは、その土台として社内の業務を一つずつ書き出し、担当者や時間を整理する作業です。棚卸しで作った業務一覧が、見える化の出発点になります。
Q.従業員が少ない会社でも業務棚卸しは必要ですか?
A.2023年版中小企業白書では、業務の棚卸しができている企業ほどデジタル化の効果を実感している割合が高い一方、従業員20人以下の企業で棚卸しが「できている」割合は約3割にとどまると分析されています[1]。人数が少ない会社ほど一人が多くの業務を抱えやすいため、書き出す価値は大きいと私たちは考えています。
Q.業務の洗い出しの参考になる公的な資料はありますか?
A.厚生労働省の「職業能力評価基準」は、仕事に必要な知識・技術・技能と職務行動例を業種別・職種別に整理したもので、策定業種一覧には56業種が掲載されています[3]。自社の業種のものを参考にすると、書き出しの漏れに気づきやすくなります。
Q.業務棚卸しについて無料で相談できる窓口はありますか?
A.国が全国に設置する「よろず支援拠点」で、何度でも無料で相談できます。令和8年度は各拠点にAIアドバイザーが配置され、AIを活用できる業務の整理などをサポートしています[5]。

参考・出典

  1. [1]中小企業庁「2023年版「中小企業白書」 第2部第3章第2節 中小企業のデジタル化推進に向けた取組」
  2. [2]独立行政法人中小企業基盤整備機構「中小企業のAI等の利活用に係る実態調査(2026年3月)調査結果のポイント」
  3. [3]厚生労働省「職業能力評価基準」
  4. [4]J-Net21(中小企業基盤整備機構)「「見える化」とはどういうことなのでしょうか?」
  5. [5]よろず支援拠点全国本部(中小企業基盤整備機構)「よろず支援拠点・生産性向上支援センターとは」

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