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事業承継で社長の業務を引き継ぐには|社長の仕事の棚卸し表・後継者へ渡す順番・3年間の進め方

株式と肩書きを渡しても、社長の頭の中にある仕事は自動では引き継がれません。営業、資金繰り、価格の決定、人の評価。社長が一人で担ってきた業務を書き出し、後継者と幹部に少しずつ渡していく進め方を、事業承継ガイドラインと最新の白書データをもとにまとめました。

約19分で読めます

この記事の要点

  • 中小企業庁の事業承継ガイドラインは、後継者に承継すべき経営資源を「人(経営)」「資産」「知的資産」の3つに分け、株式の承継は取組全体の中では資産の承継の一部に過ぎないとしています[1]。社長が日々行っている業務と判断の引き継ぎは、このうち「人(経営)」と「知的資産」にあたります。
  • 2026年版中小企業白書によると、中小企業の後継者不在率は2025年に50.8%まで下がり、後継者不在の解消は一定程度進んでいます。一方で、経営者の過半数は60歳以上です[2]。後継者が決まった会社では、「何を、どの順番で渡すか」が次の課題になります。
  • ガイドラインは、後継者を決めてから事業承継が完了するまでの移行期間は3年以上を要する割合が半数を上回るとし、概ね60歳頃には準備に着手することが望ましいとしています[1]。
  • 進め方は、①社長の仕事を書き出す → ②後継者・幹部・やめる・仕組みにする、の4つに仕分ける → ③同行と同席 → ④任せて後ろで確かめる → ⑤取引先・金融機関・従業員に説明する → ⑥交代後の相談の決まりをつくる、の順がおすすめです(私たちの考えです)。

「後継者は決まった。株式や税金のことは税理士に相談している。けれども、自分が毎日やっている仕事を、どうやって渡せばいいのか分からない」。事業承継の準備で、あとまわしになりやすいのがこの部分です。

この記事では、会社の経営権や資産の引き継ぎではなく、社長が担ってきた日々の業務と判断を後継者に引き継ぐ進め方をまとめます。数字と制度は、官公庁・公的機関の資料で2026年10月6日に確認したものだけを載せています。棚卸しの分野の分け方や進め方など私たちの考えは、そうと分かるように書いています。株式・税金・相続・M&Aの手続きは扱いません。そちらは最後に紹介する公的な窓口や専門家にご相談ください。

事業承継で引き継ぐのは、株式と肩書きだけではない

中小企業庁の「事業承継ガイドライン」は、事業承継が単に「株式の承継」+「代表者の交代」と考えられることがあると指摘したうえで、事業承継とは文字通り「事業」そのものを「承継」する取組であり、後継者が安定した経営を行うためには、現経営者が培ってきたあらゆる経営資源を承継する必要があるとしています[1]。

承継すべき経営資源は、「人(経営)」「資産」「知的資産」の3要素に大別されます[1]。株式の承継は、取組全体の中では資産の承継の一部に過ぎません[1]。

3つの要素ガイドラインの説明[1]この記事との関係
人(経営)後継者への経営権の承継。会社であれば代表取締役の交代後継者が経営に必要な能力を身につけるまでの準備を扱う
資産事業用資産(設備・不動産など)、債権、債務、自社株式の承継扱わない(税理士などの専門家へ)
知的資産人材、技術、技能、知的財産、組織力、経営理念、顧客とのネットワークなど、財務諸表には表れてこない目に見えにくい経営資源の総称社長の判断の基準、取引先・従業員との関係の引き継ぎを扱う

ガイドラインは、中小企業ではノウハウや取引関係等が経営者個人に集中していることが多く、事業の円滑な運営や業績が経営者の資質に大きく左右される傾向があるとしています[1]。経営者と従業員の信頼関係が経営者の交代で失われ、従業員の大量退職に至った事例も存在すると書かれています[1]。

つまり、社長の業務の引き継ぎは、事業承継の「おまけ」ではなく本体の一部です。日々の仕事の引き継ぎ全般については「中小企業の業務引継ぎの進め方」の記事で、この記事では社長の仕事にしぼって説明します。

データで見る:後継者が決まった会社は増えた。次は「何をどう渡すか」

2026年版中小企業白書によると、中小企業の後継者不在率は、2016年の66.0%から2025年には50.8%まで下がりました[2]。経営者の年代別にみると、2025年の後継者不在率は60代で36.3%、70代で26.5%、80代以上で21.3%です[2]。白書は、後継者不在の解消が一定程度進んでいるとしています[2]。

一方で、白書は、中小企業の経営者年齢の水準は依然として高く、2025年は60歳以上の経営者が過半数を占めているとしています[2]。

準備にかかる時間について、事業承継ガイドラインは、後継者を決めてから事業承継が完了するまでの移行期間(後継者の育成期間を含む)は3年以上を要する割合が半数を上回り、10年以上を要する割合も少なくないとしています[1]。そのうえで、概ね60歳頃には事業承継に向けた準備に着手することが望ましく、70歳を超えている場合にはすぐにでも準備に着手すべきだとしています[1]。

後継者の側からみても、時間は必要です。ガイドラインが引用する調査では、事業を引き継ぐことが決まっている後継者候補が、経営者になるために必要だと思う準備期間は、5年以上との回答が約5割を占めます[1]。現経営者が事業承継の課題として「後継者の経営力育成」を挙げる割合は4割強で、「事業の将来性」に次いで多く、後継者候補が事業を継ぐことに前向きでない理由は「自身の能力の不足」が57.6%で最も多くなっています[1]。

これらの数字から私たちが読み取っているのは、「誰に継ぐか」が決まった会社が増えたぶん、「社長の仕事を、何年かけて、どの順番で渡すか」を考える段階の会社が増えている、ということです。後継者の「自分にできるだろうか」という不安は、渡される仕事の中身が見えていないことからも来ていると私たちは考えています。中身を見えるようにする最初の一歩が、社長の仕事の棚卸しです。

手順1:社長の仕事を書き出す(7つの分野の棚卸し表)

最初に、社長がいま行っている仕事を一覧にします。次の表は、書き出すときの手がかりとして私たちが整理した7つの分野です(公的に決められた分類ではありません)。

分野仕事の例社長にしか分からないことの例残しておくもの
① 営業・取引先主要な取引先への訪問、新しい仕事の相談、クレームの最終対応相手の決裁者は誰か、過去の経緯、値引きや納期で譲れる範囲取引先ごとのメモ(窓口・経緯・約束ごと)
② 資金繰り・金融機関資金繰りの確認、借入の相談、支払いの順番の判断金融機関の担当者との関係、借入の条件、担保や保証の内容借入の一覧、返済の予定、金融機関ごとの窓口
③ 見積・価格の決定見積の最終決定、仕入れ先との価格交渉利益をどこまで見込むか、赤字でも受ける仕事の基準過去の見積と、その価格にした理由
④ 人(採用・評価・給与)採用の最終面接、昇給・賞与の決定、配置の決定評価で見ている点、一人ひとりの事情や約束評価と昇給の考え方のメモ
⑤ 現場・品質の最終判断出荷や納品の可否、設備投資、トラブル時の判断止める・進めるの基準、過去の失敗から決めたルール判断の基準と、過去の事例
⑥ 社外の付き合い業界団体・商工会議所・地域の役職、顧問の税理士や社会保険労務士とのやりとり誰に何を頼めるか、どの会合が仕事につながっているか会合と役職の一覧、相談先の連絡先
⑦ 契約・届出・会社と個人の関係契約の更新、許認可や届出、代表者名義の手続き更新の時期、社長個人の名義や資産で成り立っているもの契約・許認可・届出の一覧と期限

書き出すときは、きれいにまとめようとせず、まず過去1か月の予定表・メール・電話の記録を見返して「自分が決めたこと」「自分に相談が来たこと」を並べるのがおすすめです。月に1回・年に1回しかない仕事(決算、賞与、契約の更新、許認可の更新など)は抜けやすいので、1年分のカレンダーでも確かめます。

⑦について、事業承継ガイドラインは、会社の経営状況の見える化に資する取組の一つとして、経営者所有の不動産で事業に利用しているものの有無、その不動産に対する会社借入に係る担保設定、経営者と会社間の貸借関係、経営者保証の有無など、会社と個人の関係の明確化を図ることを挙げています[1]。ここは税理士や金融機関と一緒に確かめる項目です。

書き出し方の基本(1つの仕事を1行にする、頻度と所要時間を書く)は「業務棚卸しのやり方」の記事で紹介しています。

手順2:書き出した仕事を4つに仕分ける

一覧ができたら、すべてを後継者に渡そうとしないことが大切だと私たちは考えています。社長が長年かけて一人で抱えるようになった仕事を、そのまま一人に渡すと、同じ「社長にしか分からない」状態が次の代にも続くからです。1行ずつ、次の4つに仕分けます。

仕分けどんな仕事か例
A 後継者に渡す会社の方向や大きなお金を決める仕事、代表者として顔を出す必要がある仕事主要な取引先との関係、金融機関との相談、採用と評価の最終決定、設備投資の判断
B 幹部・担当者に渡す基準さえ決まっていれば、社長でなくても判断できる仕事決まった範囲内の見積、日々の発注、定例の届出、クレームの一次対応
C やめる・減らす習慣で続いているが、いまは役割を終えている仕事目的がはっきりしない会合、誰も見ていない報告書の確認
D 仕組みにする手順や基準を書けば、人に頼らず回せる仕事見積の基準表、承認のルール、契約や許認可の期限の一覧、手順書

BとDは、後継者の負担を軽くするための仕分けです。Dでは、文書の下書きや記録の整理に生成AIを使える場面もあります。ガイドラインも、事業承継を契機に、デジタル化の推進を起点として成長を目指していくことが必要だとしています[1]。代替わりは、仕事のやり方を見直しやすい時期でもあります。

Bを渡すときは、「いくらまでなら自分で決めてよいか」「どんなときは社長(後継者)に相談するか」という線を言葉にして渡します。線がないまま任せると、結局すべての相談が社長に戻ってきます。

手順3〜6:3年間で渡す進め方

仕分けのあとは、時間をかけて渡していきます。ガイドラインは、後継者教育について、社内教育と社外教育をうまく組み合わせて計画的に行うべきだとしています[1]。社内教育の例として、営業や製造の現場、総務、財務、労務といった各分野を一通り経験できるローテーションを組むこと、経営企画といった経営の中枢を担ってもらい重要な意思決定やリーダーシップを発揮する機会を与えることを挙げています[1]。社外教育の例は、他社での勤務経験と、商工会・商工会議所や金融機関等が主催する「後継者塾」、中小企業大学校などでの体系的な学びです[1]。

これを踏まえて、移行期間を3年とした場合の進め方の目安を表にしました。年数の区切りと内容は私たちの整理です。会社の状況に合わせて伸び縮みさせてください。

時期社長がすること後継者がすること渡す仕事の目安
1年目:見せる(手順3)棚卸し表をもとに、取引先・金融機関・会合に後継者を同行させる。判断のたびに理由を話す同行・同席して、相手と経緯を覚える。聞いた理由を棚卸し表に書き足すB(幹部・担当者に渡す仕事)とD(仕組みにする仕事)から先に進める
2年目:任せて確かめる(手順4)分野ごとに後継者へ任せ、結果を月1回ふり返る。口を出すのは決めた基準を外れたときだけにする見積・採用・資金繰りなどを自分で判断し、迷った点を記録して相談するA(後継者に渡す仕事)を分野ごとに順番に
3年目:外に伝える(手順5・6)取引先・金融機関・従業員に後継者と今後の予定を説明する。交代後の自分の役割と相談の受け方を決める代表者として前に出る。事業計画を自分の言葉で説明する代表者としての仕事すべて

手順5の「外に伝える」について、ガイドラインは、従業員には早期に後継者候補や事業承継計画を周知しておくべきだとしています[1]。後継者候補の存在を知らなければ会社の将来性に対する不安が募り、士気にも関わるためです[1]。

取引先や金融機関については、事業承継の話題を持ち出すこと自体が信用問題につながると考えて避けてしまう経営者も存在すると言われている、としたうえで、経営者が高齢であるのに事業承継の計画が明示されないよりは、後継者候補の紹介を受け、計画を明示されたほうが、将来にわたって取引関係を継続していく上でも有益であることは明らかだとしています[1]。理解と協力を得られるよう、早期に説明を行うべきだというのがガイドラインの考え方です[1]。

事業承継計画についても、後継者や親族と共同で、取引先や従業員、取引金融機関等との関係を念頭に置いて策定し、策定後はこれらの関係者と共有しておくことが望ましいとされています[1]。計画書を作ること自体は最終的な目的ではなく、現経営者と後継者が対話しながら計画を策定するプロセスにこそ意味がある、という点も強調されています[1]。

手順6の「交代後の相談の決まり」は、私たちが特に大切だと考えている点です。交代したあとも先代がすべての判断に関わると、従業員も取引先も先代のほうを向いたままになります。「相談を受けるのは月1回」「現場への指示は後継者を通す」のように、先代の関わり方を二人で決めておくことをおすすめします。

いちばん渡しにくい「判断の基準」を言葉にする

手順書にできる仕事は、時間さえかければ渡せます。渡しにくいのは、「なぜあの取引先を大事にしているのか」「なぜあの仕事は断ったのか」といった判断の基準です。これはガイドラインのいう知的資産にあたります。

ガイドラインは、知的資産の承継について、自社が保有する知的資産に気付くこと(知的資産の棚卸し)から始め、その「見える化」を行うことが大切だとしています[1]。この過程では、レポートの作成を目的とするのではなく、現経営者が自社の沿革や取組を振り返りつつ、自社の強み・価値の源泉を「自ら整理」したうえで、後継者等の関係者との「対話」を通じて認識を共有することが不可欠だとしています[1]。支援機関の役割は、現経営者や後継者が自ら整理するにあたっての「聞き出し役・引き出し役」に徹することだとも書かれています[1]。

社長が自分で書くより、後継者が質問して聞き取るほうが出てきやすいと私たちは考えています。次のような質問が手がかりになります(私たちの案です)。

  • この取引先とは、どういうきっかけで付き合いが始まったのか。なぜ自社が選ばれていると思うか
  • これまでで、いちばん苦しかった時期はいつか。そのとき何を優先し、何をあきらめたか
  • 断った仕事・やめた事業はあるか。その理由は何か
  • 値引きや納期で、ここまでは譲る・ここからは譲らない、という線はどこか
  • 人を採るとき・評価するとき、何を見ているか
  • 金融機関には、ふだん何を伝えるようにしているか
  • これだけは次の代でも変えないでほしいことは何か。逆に、変えてよいと思っていることは何か

聞き取りは録音して文字に起こしておくと、あとで読み返せます。録音や生成AIを使うときの注意点は「引き継ぎマニュアルをAIで作る方法」の記事にまとめています。

ガイドラインは、経営者が過去から現在までを振り返りながら、経営に対する想い、価値観、信条を再確認するプロセスは事業承継の本質といえるとし、可能であれば明文化して後継者・従業員・取引先といった関係者と共有しておけば、理解や協力を得る上でも有用だとしています[1]。上の質問への答えは、その材料になります。

つまずきやすい点と対策

社長の業務の引き継ぎでつまずきやすい点を、表にまとめました(私たちの整理です)。

つまずき起きること対策
忙しくて書き出せない棚卸しが始まらないまま年数が過ぎる後継者が社長に1回30分ずつ聞き取り、後継者が表にする
全部を後継者一人に渡そうとする後継者が抱えきれず、判断が遅れる手順2の仕分けで、幹部に渡す仕事・仕組みにする仕事を先に分ける
取引先・金融機関への紹介が遅い交代の直前に知らされた相手が不安を感じる1年目から同行させ、計画が固まったら早めに説明する[1]
個人保証の話を後回しにする交代の時期になって後継者の負担が明らかになる早い段階で保証の有無を一覧にし、金融機関と専門家に相談する
交代後も先代がすべてに関わる従業員と取引先が先代を向いたままになる交代後の相談の頻度と、指示の出し方を二人で決めておく

個人保証について補足します。ガイドラインは、後継者にとって経営者保証等が事業承継時の課題や障害になることがあるとし、「経営者保証に関するガイドライン」を踏まえた対応を行うことも有益だとしています[1]。ガイドラインが引用する中小機構のアンケート(2017年)では、経営者保証を解除したいと考えている中小企業経営者のうち、金融機関に解除の申し出・相談を行った経営者は14.5%にとどまり、申し出・相談を行った経営者のうち4割が解除されたと回答しています[1]。自社の場合にどうなるかは個別の判断になるため、金融機関と税理士などの専門家にご相談ください。

社長の業務の引き継ぎチェック表

  • □ 社長がいま行っている仕事を、7つの分野で書き出した
  • □ 月1回・年1回の仕事(決算、賞与、契約や許認可の更新)も一覧に入っている
  • □ 1行ずつ「後継者に渡す/幹部・担当者に渡す/やめる・減らす/仕組みにする」に仕分けた
  • □ 幹部・担当者に任せる仕事には、自分で決めてよい範囲と相談する条件を決めた
  • □ 主要な取引先・金融機関・社外の相談先に、後継者が同行・同席している
  • □ 判断の理由(価格、採用、断る仕事の基準)を後継者が聞き取り、記録している
  • □ 会社と社長個人の関係(事業に使っている個人の資産、担保、貸借、保証)を一覧にした
  • □ 従業員・取引先・金融機関に、後継者と今後の予定を説明する時期を決めた
  • □ 交代後の先代の役割と、相談の頻度・方法を決めた
  • □ 株式・税金・相続については、税理士などの専門家や公的な窓口に相談している

相談先

事業承継そのものの相談は、47都道府県に設置されている「事業承継・引継ぎ支援センター」が公的な窓口です[2][3]。親族や従業員に承継する場合の事業承継計画の策定等の支援(親族内承継支援)、後継者がいない場合の相談から譲受企業の紹介・成約までの支援(第三者承継支援)、創業を目指す起業家と後継者不在の会社や個人事業主を引き合わせる「後継者人材バンク」があります[3]。2026年版中小企業白書によると、同センターの2024年度の相談者数は16,045者、第三者承継に関する成約件数は2,132件でした[2]。

商工会・商工会議所、金融機関などの身近な支援機関でつくる「事業承継ネットワーク」では、経営者の課題やニーズを掘り起こす事業承継診断を行い、必要に応じて同センターへの橋渡しをしています[2]。株式や事業用資産、税金については、準備に着手する段階で早期に税理士等の支援機関に相談することが有益だとガイドラインは述べています[1]。

社長の仕事の見直しや、AIの活用を含めた経営全般の相談は、国が全国に設置した無料の経営相談所「よろず支援拠点」で、何度でも無料で相談できます[4]。令和8年度に各拠点に配置されたAIアドバイザーが、AIを活用できる業務の整理などをサポートしています[4]。

私たちEnbitoがお手伝いできるのは、このうち「仕事を書き出して見えるようにする」部分です。AIインタビューで社員から業務を聞き取り、業務台帳をつくる業務棚卸しAI「縁SCAN」と、経営者と現場への聞き取りをもとに業務の流れを整理する「業務診断」を提供しています。株式・税金・M&Aの助言は行っていませんので、そちらは上の窓口や専門家とあわせてご利用ください。

まとめ

事業承継で引き継ぐのは、株式と肩書きだけではありません。社長が毎日行っている判断、取引先や従業員との関係も、次の代に渡す経営資源です。渡すには年単位の時間がかかります。

最初の一歩は、社長の仕事を一覧に書き出すことです。書き出してみると、後継者に渡す仕事だけでなく、幹部に任せられる仕事、やめてよい仕事、仕組みにできる仕事が見えてきます。後継者が決まっている会社は、今月の予定表を見返すところから始めてみてください。

よくある質問

Q.事業承継の業務の引き継ぎには、どれくらいの期間がかかりますか?
A.中小企業庁の事業承継ガイドラインは、後継者を決めてから事業承継が完了するまでの移行期間(後継者の育成期間を含む)は3年以上を要する割合が半数を上回り、10年以上を要する割合も少なくないとしています[1]。概ね60歳頃には準備に着手することが望ましいとされています[1]。私たちは、社長の仕事の書き出しは後継者が決まる前から始めておくことをおすすめしています。
Q.社長の仕事は、何から書き出せばよいですか?
A.過去1か月の予定表・メール・電話の記録を見返し、「自分が決めたこと」「自分に相談が来たこと」を並べるところから始めるのがおすすめです(私たちの考えです)。そのうえで、営業・取引先、資金繰り・金融機関、見積・価格、人、現場・品質、社外の付き合い、契約・届出の7つの分野で抜けがないかを確かめます。年に1回しかない仕事は、1年分のカレンダーで確かめます。
Q.取引先や金融機関には、いつ後継者を紹介すればよいですか?
A.事業承継ガイドラインは、自社の後継者候補や事業承継計画について、取引先や金融機関からの理解・協力を得られるよう、早期に説明を行うべきだとしています[1]。経営者が高齢であるのに計画が明示されないよりは、後継者候補の紹介を受け、計画を明示されたほうが、取引関係を継続していく上でも有益だという考え方です[1]。私たちは、正式な説明の前から同行・同席で顔を合わせておくことをおすすめしています。
Q.後継者がまだ決まっていない場合は、何をすればよいですか?
A.後継者が決まっていなくても、社長の仕事の書き出しと仕分けは始められます。幹部に任せる仕事や仕組みにする仕事が進めば、誰が継ぐ場合でも引き継ぎやすくなると私たちは考えています。後継者がいない場合の相談は、47都道府県の事業承継・引継ぎ支援センターが受け付けており、第三者への事業引継ぎの支援や後継者人材バンクがあります[3]。
Q.業務の引き継ぎと、株式や税金の手続きは、どちらを先に進めるべきですか?
A.どちらかを先に、ではなく並行して進めるものだと私たちは考えています。事業承継ガイドラインは、承継すべき経営資源を「人(経営)」「資産」「知的資産」の3要素とし、株式の承継は取組全体の中では資産の承継の一部に過ぎないとしています[1]。株式や税金は早期に税理士等に相談し[1]、社長の仕事の書き出しは社内で今日から始められます。

参考・出典

  1. [1]中小企業庁「事業承継ガイドライン(第3版)令和4年3月改訂(PDF)」
  2. [2]中小企業庁「2026年版中小企業白書 第1部第1章第8節「事業承継、M&A」(第1-1-44図 後継者不在率の推移、第1-1-45図 経営者年齢の分布、第1-1-47図 事業承継・引継ぎ支援センターの相談者数及び成約件数)」
  3. [3]独立行政法人中小企業基盤整備機構「事業承継・引継ぎポータル」
  4. [4]よろず支援拠点全国本部(中小企業基盤整備機構)「よろず支援拠点・生産性向上支援センターとは」

制度・数値は2026.10.06時点で各公式情報を確認したものです。補助金・助成金などは公募回ごとに内容が変わるため、申請の前に必ず最新の公式情報をご確認ください。

Author

中胡 翔太郎株式会社Enbito 代表取締役

広島県出身。大手日系事業会社で生成AIを実際の業務に組み込み、大手外資系コンサルティングファームで企業の業務改革を支援。個人事業として30社以上の企業・事業者の立ち上げと成長に伴走。現在は株式会社Enbitoの代表として、地方の中小企業のAI活用支援・業務改善に取り組んでいます。

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