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経理の引き継ぎの進め方|一人経理の退職に備える業務の棚卸し表・締切の一覧表・引き継ぐ順番【中小企業向け】

経理を一人で担当している社員が辞めることになった。何を、どの順番で引き継げば、支払いや申告を止めずに済むのか。経理の仕事の棚卸し表、公式ページで確認した締切の一覧表、残り期間別の順番、通帳やパスワードの渡し方を整理しました。

約18分で読めます

この記事の要点

  • 経理の引き継ぎは、手順を教える前に「締切のある仕事」を一覧にするところから始めるのがおすすめです(私たちの考え)。法人税と消費税の申告・納付は事業年度終了の日の翌日から2か月以内[2]、源泉所得税の納付は給与などを支払った月の翌月10日まで[3]、社会保険料の納付は翌月末日[7]と、会社の外に期限のある仕事が多いためです。
  • 年に1回しかない仕事ほど、引き継ぎからもれやすくなります。源泉徴収票と給与支払報告書の提出は翌年1月31日まで[4]、算定基礎届は毎年7月10日まで[6]、労働保険の年度更新は令和8年度の場合6月1日〜7月10日でした[8]。
  • 通帳・印鑑・ネットバンキングの権限とパスワードは、引き継ぎ書には書かず、会社の手続きで渡します。IPAのガイドラインは、異動や退職で不要になった利用者IDとアクセス権を「ただちに削除」することを求めています[9]。
  • 法人は、帳簿と取引の書類を、確定申告書の提出期限の翌日から7年間保存しなければなりません[5]。前任者しか場所を知らない書類とデータを残さないことが、引き継ぎの仕上げです。

ガイドこのテーマの全体像は中小企業の業務引継ぎの進め方

「経理を一人で任せていた社員から、退職の申し出があった」。人数の少ない会社では、経理・給与・社会保険の手続きを一人の担当者が受け持っていることが珍しくありません。その人が辞めるとき、会社が心配するのは「来月の支払いと給与は止まらないか」「申告や届出の期限に間に合うか」ではないでしょうか。

この記事では、経理の引き継ぎを、経理担当者が一人か二人の中小企業向けに整理します。経理の仕事の棚卸し表、締切のある仕事の一覧表、残り期間別の引き継ぐ順番、通帳・印鑑・パスワードの渡し方、書類の保存、後任がいないときの分け方の順に説明します。期限や保存期間は、国税庁・日本年金機構・厚生労働省などの公式ページで2026年10月7日に確認したものだけを載せています。私たちの考えやおすすめは、そうと分かるように書いています。

なお、税金や社会保険の個別の判断(自社がどの申告・届出の対象になるか、特例を使えるかなど)は、会社ごとに違います。この記事は引き継ぎの段取りを扱うもので、個別の判断は顧問の税理士・社会保険労務士、または税務署・年金事務所などの窓口に確かめてください。

経理の引き継ぎが、ほかの仕事より難しい3つの理由

経理の引き継ぎには、ほかの事務の仕事にはない難しさが3つあると私たちは考えています(私たちの整理です)。

  • 会社の外に期限がある:税金の申告・納付、社会保険料の納付、取引先への支払い、給与の振込は、社内の都合で遅らせることができません。
  • 年に1回しかない仕事が多い:決算、年末調整、算定基礎届、労働保険の年度更新などは、引き継ぎの期間中に一度も実際にやって見せられないことがあります。
  • お金を動かす権限がついてくる:通帳、銀行印、ネットバンキング、会計ソフトなど、手順だけでなく「権限」も渡す必要があります。

だからこそ、ふだんからの書き残しが効いてきます。2026年版小規模企業白書によると、小規模事業者が社内ノウハウを蓄積・共有するうえで有効だった取組は「マニュアルや手順書の整備」と答えた割合が最も高く、得られた効果は「担当者不在時でも業務が滞りなく遂行できるようになった」が最も高く、次いで「業務の引継ぎが円滑に行えるようになった」でした[1]。

手順1:経理の仕事を棚卸しする(日次・月次・年次・不定期)

最初にやることは、手順を教えることではなく、経理の仕事を全部書き出すことです。前任者の頭の中にある仕事を、「いつやるか」で4つに分けて一覧にします。下の表は、中小企業でよくある仕事を並べた例です(私たちの整理です。自社にない仕事は消し、ある仕事を足してください)。

時期仕事の例引き継ぎで確かめること
毎日・毎週現金の出し入れと残高の確認、預金の入出金の確認、領収書・請求書の整理、会計ソフトへの入力、経費の精算現金の保管場所と数える人、入力のルール(勘定科目の使い分け)、書類の置き場所
毎月請求書の発行、入金の確認と未入金の連絡、仕入先・外注先への支払い、給与の計算と振込、源泉所得税・住民税・社会保険料の納付、月次の試算表づくり、税理士への資料の受け渡し締め日と支払日、取引先ごとの決まりごと、振込の承認の流れ、税理士に渡す資料と日にち
年に1回・数回決算と法人税・消費税の申告、年末調整、源泉徴収票・給与支払報告書の提出、算定基礎届、労働保険の年度更新、賞与の計算と届出、棚卸し、固定資産の確認作業を始める時期、去年の資料の場所、税理士・社会保険労務士との分担
不定期入社・退職の手続き、金融機関とのやり取り(借入の返済・更新)、税務署や年金事務所からの問い合わせへの対応、補助金・助成金の経理書類過去のやり取りの記録の場所、金融機関の担当者の連絡先

書き出すときは、仕事の名前のほかに「誰が」「いつ」「何を見て」「どこに入力・提出するか」「外部の誰と分担しているか」を1行ずつ書きます。会計ソフトの入力履歴、預金の入出金の明細、去年のカレンダーや送信済みのメールを見ながら進めると、前任者が忘れている仕事を拾いやすくなります。業務の書き出し方は「業務棚卸しのやり方」の記事で詳しく説明しています。

手順2:締切のある仕事を一覧表にする(公式ページで確認した期限)

次に、棚卸しした仕事の中から、会社の外に期限がある仕事を抜き出します。下の表は、多くの会社に関係する主な期限を、公式ページで確認して並べたものです。自社が対象かどうか、特例を使っているかは会社によって違うため、前任者と顧問の税理士・社会保険労務士に確かめたうえで、自社の日付に書き直してください。

仕事期限(原則)引き継ぎで確かめること
源泉所得税の納付給与などを実際に支払った月の翌月10日まで[3]納期の特例を使っているか。給与の支給人員が常時10人未満で特例の承認を受けている場合、1〜6月分は7月10日、7〜12月分は翌年1月20日が期限[3]
健康保険・厚生年金保険の保険料の納付納付対象月の翌月末日(4月分は5月末日)[7]口座振替か、納入告知書で納めているか。告知書は毎月20日頃に事業所へ送られる[7]
個人住民税(特別徴収)の納入会社が給与から天引きして市町村に納める[11]市町村から会社に届く特別徴収税額の通知の保管場所、納める方法と日にち
法人税の申告・納付事業年度終了の日の翌日から2か月以内[2]決算月、申告期限の延長の有無、税理士に資料を渡す時期
消費税の申告・納付(法人)事業年度終了の日の翌日から2か月以内[2]課税事業者かどうか、中間申告の有無
給与所得の源泉徴収票(税務署)・給与支払報告書(市区町村)の提出翌年1月31日まで[4]年末調整を誰が行うか。従業員への源泉徴収票の交付も翌年1月31日まで。年の途中で退職した人には退職の日以後1か月以内[4]
算定基礎届の提出毎年7月10日まで(7月1日現在の被保険者の4〜6月の報酬を届け出る)[6]届出の方法(電子申請・郵送など)、社会保険労務士に頼んでいるか
労働保険の年度更新令和8年度は6月1日(月)〜7月10日(金)でした[8]来年度の期間は厚生労働省の公式ページで確認する。賃金の集計を誰が行うか

たとえば3月31日が決算日の会社なら、法人税と消費税の申告・納付の期限は原則として5月31日です。自社の決算月に置き換えて、表に日付を入れてください。

この表でいちばん気をつけたいのは、年に1回の仕事です。前任者が3月に辞めると、後任は7月の算定基礎届や年度更新を、一度も見ないまま迎えます。私たちは、年に1回の仕事については「去年の提出書類の控え」「作業に使った集計表」「始める時期と、かかった日数」の3つを、必ずセットで残してもらうことをおすすめしています。

退職する経理担当者本人の源泉徴収票も、忘れやすい仕事のひとつです。年の途中で退職した人には、退職の日以後1か月以内に源泉徴収票を交付しなければなりません[4]。本人の最後の給与計算と源泉徴収票を誰が作るのかを、退職日の前に決めておいてください。

手順3:残り期間に合わせて、引き継ぐ順番を決める

引き継ぎの期間は、いつも十分にあるとは限りません。私たちは、「止まると会社の外に迷惑がかかる仕事」から順に引き継ぐことをおすすめしています。残りの期間別の目安は次のとおりです(私たちの考えです)。

残りの期間必ずやること後回しにしてよいこと
1か月以上ある棚卸し表と締切の一覧表を作る。月次の仕事(請求・支払い・給与・納付)を、前任者と一緒に1回、後任が主になってもう1回行う。年に1回の仕事は、去年の資料を見ながら流れを説明してもらう入力のしかたの細かな改善、書類の整理のやり直し
2週間ほど締切の一覧表を作る。次の給与の支払いと、次の取引先への支払いを一緒に行う。通帳・印鑑・権限の受け渡しを済ませる。税理士・社会保険労務士・金融機関に後任を紹介する月次の試算表づくりの手順(税理士に相談する)、過去の書類の整理
数日しかない締切の一覧表(日付と提出先だけでもよい)。お金の出し入れに必要なもの(通帳・印鑑・ネットバンキングの権限)の受け渡し。書類とデータの置き場所の確認。前任者の説明を録音する手順書づくり(録音と去年の資料から、あとで作る)

「一緒に1回、後任が主になってもう1回」は、経理の引き継ぎでとくに効くやり方だと私たちは考えています。見ているだけでは、取引先ごとの例外や、数字が合わないときの確かめ方が伝わりにくいからです。

退職までの日数がほとんどない場合の動き方は「急な退職で引き継ぎができないときの対策」の記事で、引き継ぎ書の項目と書き方は「引き継ぎ書の作り方」の記事で扱っています。

経理の引き継ぎ書に、必ず書いておきたい10項目

ふつうの引き継ぎ書の項目に加えて、経理では次の10項目を書いておくことをおすすめします(私たちのおすすめです)。

  • 締め日と支払日:自社の請求の締め日、取引先ごとの支払日、給与の締め日と支給日。
  • 取引先ごとの決まりごと:請求書の送り方(郵送・メール・専用のシステム)、振込手数料をどちらが負担するか、相殺や値引きの扱い。
  • 毎月決まって出ていくお金:家賃、リース料、借入の返済、保険料、会費など。口座から自動で引き落とされるものも含める。
  • 口座の一覧:金融機関・支店・口座の使い分け(売上の入金用、支払い用、給与用など)。口座番号や暗証番号は書かない。
  • 会計ソフト・給与ソフトの使い方:入力のルール、よく使う勘定科目と補助科目、月の締めの手順。
  • 数字が合わないときの確かめ方:残高が合わないとき、どこから順に見るか。
  • 外部の専門家との分担:税理士・社会保険労務士に何を、いつ、どの形で渡しているか。担当者の名前と連絡先。
  • 金融機関とのやり取り:担当者の連絡先、借入の一覧(返済日・更新の時期)、定期的に出している資料。
  • 年に1回の仕事の記録:去年の提出書類の控えの場所、始めた時期、かかった日数、つまずいた点。
  • 進行中のこと:未入金の取引先と連絡の状況、支払いを待ってもらっている先、税務署や年金事務所から届いている問い合わせ。

通帳・印鑑・ネットバンキング・パスワードの渡し方

経理の引き継ぎでは、手順と一緒に「お金を動かせる権限」が動きます。ここは引き継ぎ書に書いて済ませず、経営者が立ち会って受け渡すことをおすすめします(私たちの考えです)。

独立行政法人情報処理推進機構(IPA)の「組織における内部不正防止ガイドライン」は、異動又は退職により不要となった利用者ID及びアクセス権は、ただちに削除しなければならないとしています[9]。前任者のIDとパスワードを後任がそのまま使い続けると、誰が操作したのかが分からなくなります。後任には後任の名前で利用者を登録し、前任者の利用者は退職日に止めてください。

渡すものやること立ち会う人
通帳・キャッシュカード・銀行印・小口現金残高を数えて記録し、受け渡しの日付と名前を残す。保管場所と、鍵を持つ人を決め直す経営者
ネットバンキング前任者の利用者を止め、後任の利用者を登録する。振込の「入力する人」と「承認する人」を分けられる場合は分ける経営者
会計ソフト・給与ソフト・請求書のシステム後任の利用者を発行し、前任者の利用者を止める。管理者の権限を誰が持つかを決める経営者または管理者
税金・社会保険の電子申請に使うIDなど何があるかを一覧にし、会社として管理する場所を決める。税理士・社会保険労務士が代わりに申請している手続きも確かめる経営者
共有していたパスワード新しいものに変え、会社で決めた方法で伝える。引き継ぎ書には書かない管理者

一人経理では、入力から振込までを一人で行う場面が多くなります。同じガイドラインは、他の役職員が不在で相互監視ができない環境における単独作業を制限することが望ましいとし、単独作業には事前の承認と事後の確認の手続きを設けることを対策のポイントに挙げています[9]。経理担当者を疑うためではなく、担当者を守るためにも、「振込は経営者が承認する」「月に一度、経営者が通帳と帳簿の残高を見る」といった決まりを、引き継ぎをきっかけに作っておくことをおすすめします(私たちの考えです)。

書類とデータの置き場所:保存期間を過ぎるまで探せるようにする

法人は、帳簿を備え付けて取引を記録し、その帳簿と、取引に関して作成または受領した書類を、その事業年度の確定申告書の提出期限の翌日から7年間保存しなければなりません(青色申告書を提出した事業年度で欠損金額が生じた事業年度などは10年間)[5]。帳簿には総勘定元帳・仕訳帳・現金出納帳・売掛金元帳・買掛金元帳・固定資産台帳など、書類には棚卸表・貸借対照表・損益計算書・注文書・契約書・領収書などが含まれます[5]。

請求書・領収書・契約書・見積書などの電子データを送ったり受け取ったりした場合は、その電子データを一定の要件を満たした形で保存することが必要です[10]。メールで届いた請求書のPDFが前任者のメールの受信箱にしかない、という状態は、引き継ぎのときに解消しておきたい点です。

引き継ぎでは、次の4つを一覧にしておくことをおすすめします(私たちのおすすめです)。

  • 紙の書類:年度ごとの保管場所(事務所の棚、倉庫、外部の保管先)。
  • 電子データ:共有フォルダの場所とフォルダの分け方。前任者のパソコンやメールの中にしかないものは、共有の場所に移す。
  • 会計ソフトのデータ:どの年度まで入っているか、バックアップの場所と取り方。
  • 税理士・社会保険労務士に預けているもの:何を預けているか、控えがどこにあるか。

後任がいないときは、仕事を3つに分ける

小さな会社では、経理の後任がすぐに見つからないこともあります。そのときは、棚卸し表の仕事を次の3つに分けると、当面の体制を決めやすくなります(私たちの考えです)。

分け方向いている仕事気をつけること
経営者が持つ振込の承認、通帳と残高の確認、金融機関とのやり取りお金を動かす権限は、いったん経営者に集めると安全
社内のほかの人が兼ねる請求書の発行、領収書・請求書の整理、経費の精算、会計ソフトへの入力の一部締切の一覧表を渡し、本来の仕事と重なる時期を先に確かめる
外部の専門家に頼む税金の申告、年末調整、社会保険・労働保険の手続き、月次の入力や確認何を、いつまでに、どの形で渡すかを決める。頼める範囲と費用は、顧問の税理士・社会保険労務士に確かめる

どの分け方でも、締切の一覧表と書類の置き場所が分かっていれば、引き受ける側が動きやすくなります。逆に、この2つがないと、誰に頼んでも「何を、いつまでに」から調べ直すことになります。

日ごろの備え:一人経理を「一人だけが知っている」状態にしない

経理の引き継ぎは、退職の申し出があってから始めると、時間が足りなくなりやすい仕事です。私たちは、退職の予定がなくても、次の3つを日ごろから行っておくことをおすすめしています(私たちの考えです)。

  • 締切の一覧表を、経営者も見られる場所に置く。年に一度、決算のあとに見直す。
  • 年に1回の仕事は、終わった直後に「始めた時期・かかった日数・つまずいた点」を数行で書き残す。
  • 月に一度、経営者か別の社員が、支払いと給与の振込の作業を横で見る。休暇や病気のときの代わりにもなる。

手順書づくりに時間を取れないときは、前任者に作業をしながら説明してもらい、その録音をもとに手順書の下書きを作る方法があります。生成AIを使う場合の手順と、入力してはいけない情報(取引先の名前、口座の情報、従業員の給与など)は「引き継ぎマニュアルをAIで作る方法」の記事で説明しています。

経理の引き継ぎのチェック表

確かめることできていれば
棚卸し経理の仕事を、毎日・毎月・年に1回・不定期に分けて書き出した
締切会社の外に期限がある仕事を、自社の日付で一覧表にした
年に1回の仕事去年の提出書類の控え、集計表、始める時期を残した
実地給与の支払いと取引先への支払いを、後任が主になって1回行った
退職者本人の手続き前任者の最後の給与計算と源泉徴収票を誰が作るか決めた
お金の権限通帳・印鑑・ネットバンキングを、経営者の立ち会いで受け渡した
アカウント前任者の利用者を止め、後任の名前で発行した。共有のパスワードを変えた
書類とデータ紙・電子データ・会計ソフトのデータの置き場所を一覧にした
外部への連絡税理士・社会保険労務士・金融機関に、後任を紹介した
進行中のこと未入金・支払い待ち・役所からの問い合わせの状況を書き出した

まとめ:手順より先に、締切と権限と置き場所

経理の引き継ぎで会社が困るのは、「入力のしかたが分からない」ことよりも、「期限を知らなかった」「振込ができない」「去年の資料が見つからない」ことだと私たちは考えています。だからこそ、手順を細かく書く前に、締切の一覧表・お金の権限の受け渡し・書類とデータの置き場所の3つを先に済ませる順番をおすすめします。

その土台になるのが、経理の仕事の棚卸しです。棚卸し表があれば、後任が決まっていなくても、経営者・社内の兼務・外部の専門家に仕事を分けることができます。会社全体の引き継ぎの進め方は「中小企業の業務引継ぎの進め方」の記事で整理しています。

私たちEnbitoは、業務の棚卸しから始める業務改善とAI活用の支援を行っており、縁SCANは社員への聞き取りをもとに業務を見える化するための道具です。税金や社会保険の個別の判断は、顧問の税理士・社会保険労務士、または税務署・年金事務所などの窓口に確かめてください。

よくある質問

Q.経理の引き継ぎは、何から始めればよいですか?
A.経理の仕事を「毎日・毎月・年に1回・不定期」に分けて書き出し、その中から会社の外に期限がある仕事を一覧表にすることから始めるのがおすすめです(私たちの考えです)。たとえば、源泉所得税の納付は原則として給与などを支払った月の翌月10日まで[3]、健康保険・厚生年金保険の保険料の納付は納付対象月の翌月末日です[7]。手順の細かな説明は、そのあとで構いません。
Q.経理の引き継ぎで、もれやすい仕事は何ですか?
A.年に1回しかない仕事です。源泉徴収票と給与支払報告書の提出は翌年1月31日まで[4]、算定基礎届は毎年7月10日まで[6]、労働保険の年度更新は令和8年度の場合6月1日〜7月10日でした[8]。引き継ぎの期間中に実際の作業を見せられないことが多いので、去年の提出書類の控え・集計表・始める時期をセットで残してもらうことをおすすめします。
Q.経理担当者が辞めたあと、後任がいない場合はどうすればよいですか?
A.経理の仕事を「経営者が持つ(振込の承認・残高の確認)」「社内のほかの人が兼ねる(請求書の発行・書類の整理)」「外部の専門家に頼む(申告・年末調整・社会保険の手続き)」の3つに分けて、当面の体制を決める方法をおすすめします(私たちの考えです)。頼める範囲と費用は、顧問の税理士・社会保険労務士に確かめてください。
Q.ネットバンキングや会計ソフトのパスワードは、引き継ぎ書に書いてよいですか?
A.書かないことをおすすめします。IPAのガイドラインは、異動又は退職により不要となった利用者ID及びアクセス権は、ただちに削除しなければならないとしています[9]。前任者の利用者は止め、後任には後任の名前で利用者を登録し、共有していたパスワードは変更してください。
Q.経理の書類は、何年間残しておく必要がありますか?
A.法人は、帳簿と、取引に関して作成または受領した書類を、その事業年度の確定申告書の提出期限の翌日から7年間保存しなければなりません。青色申告書を提出した事業年度で欠損金額が生じた事業年度などは10年間です[5]。引き継ぎのときに、年度ごとの保管場所を一覧にしておくと、後任が探せます。

参考・出典

  1. [1]中小企業庁「2026年版 小規模企業白書(HTML版)第2部第1章第2節 小規模事業者の経営リテラシー向上(第2-1-49図・第2-1-50図)」
  2. [2]国税庁「パンフレット「暮らしの税情報」(令和8年度版)申告と納税」
  3. [3]国税庁「タックスアンサー No.2505 源泉所得税及び復興特別所得税の納付期限と納期の特例(令和8年4月1日現在法令等)」
  4. [4]国税庁「タックスアンサー No.7411 「給与所得の源泉徴収票」の提出範囲と提出枚数等(令和8年4月1日現在法令等)」
  5. [5]国税庁「タックスアンサー No.5930 帳簿書類等の保存期間(令和7年4月1日現在法令等)」
  6. [6]日本年金機構「定時決定(算定基礎届)」
  7. [7]日本年金機構「厚生年金保険料等の納付:納付期限」
  8. [8]厚生労働省「労働保険年度更新に係るお知らせ(令和8年度労働保険の年度更新期間について)」
  9. [9]独立行政法人情報処理推進機構(IPA)「組織における内部不正防止ガイドライン 第5版(2022年4月改訂。PDF)(5)情報システムにおける利用者のアクセス管理、(29)職場環境におけるマネジメント」
  10. [10]国税庁「電子帳簿保存法関係:電子取引関係」
  11. [11]総務省「地方税制度:個人住民税(普通徴収と特別徴収)」

制度・数値は2026.10.07時点で各公式情報を確認したものです。補助金・助成金などは公募回ごとに内容が変わるため、申請の前に必ず最新の公式情報をご確認ください。

Author

中胡 翔太郎株式会社Enbito 代表取締役

広島県出身。大手日系事業会社で生成AIを実際の業務に組み込み、大手外資系コンサルティングファームで企業の業務改革を支援。個人事業として30社以上の企業・事業者の立ち上げと成長に伴走。現在は株式会社Enbitoの代表として、地方の中小企業のAI活用支援・業務改善に取り組んでいます。

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