引き継ぎ書の作り方|中小企業で使える項目表・記入例と、業務棚卸しから作る6つの手順
引き継ぎ書は、何を・どの順番で・どこまで書けばよいのか。一人がいくつもの仕事を兼ねる中小企業でも無理なく作れるように、一覧表と業務シートの項目、記入例、業務棚卸しから始める手順、パスワードや鍵の扱いをまとめました。
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この記事の要点
- 引き継ぎ書は、担当者が変わるときに、仕事の内容・手順・判断のコツ・関係者を後任に渡すための文書です。私たちは、担当業務の「一覧表」(1枚)と、業務ごとの「業務シート」の2種類に分けて作ることをおすすめしています。
- 2026年版小規模企業白書では、社内ノウハウの蓄積・共有に有効だった取組は「マニュアルや手順書の整備」(39.1%)が最多で、得られた効果は「担当者不在時でも業務が滞りなく遂行できるようになった」(43.6%)、「業務の引継ぎが円滑に行えるようになった」(31.9%)が上位でした[1]。
- 作り方は、①担当業務をすべて書き出す → ②止まると困る順に並べ、書く深さを決める → ③一覧表を作る → ④業務シートを書く → ⑤後任が読んでやってみて直す → ⑥置き場所と更新の決まりを作る、の6つの手順がおすすめです。
- パスワードは引き継ぎ書に書かず、アカウントや権限は会社の手続きで付け替えます。IPAのガイドラインは、異動や退職で不要になった利用者IDとアクセス権を「ただちに削除」することを求めています[4]。
「来月で退職する社員に引き継ぎ書を書いてもらいたいが、何を書いてもらえばよいか分からない」「引き継ぎ書はもらったが、後任が読んでも仕事ができなかった」。引き継ぎ書は、書く側も受け取る側も、形が決まっていないと困りやすい文書です。
この記事では、一人がいくつもの仕事を兼ねている中小企業でも無理なく作れる引き継ぎ書の形と、作る手順をまとめます。数字や公的な決まりは官公庁・公的機関の資料で確認したものだけを載せ、項目表や手順など私たちのおすすめは、そうと分かるように書いています。退職・異動・事業承継を通した引き継ぎ全体の進め方は、別の記事「中小企業の業務引継ぎの進め方」で扱っています。
引き継ぎ書とは(業務台帳・マニュアルとの違い)
引き継ぎ書は、担当者が変わるときに、前任者が持っている仕事の内容・手順・判断のコツ・関係者とのつながりを、後任に渡すための文書です。似た文書に業務台帳やマニュアル(手順書)がありますが、目的と書く範囲が違います。次の表は私たちの整理です。
| 文書 | 目的 | 書く範囲 | 作る時期 |
|---|---|---|---|
| 業務台帳(業務の一覧) | 会社や部署にどんな業務があり、誰が担当しているかを見えるようにする | 会社・部署のすべての業務。1業務1行 | 平時(年に1回は更新) |
| マニュアル・手順書 | 誰がやっても同じ結果になるように、作業の手順をそろえる | 1つの業務の手順 | 平時(業務が変わったら更新) |
| 引き継ぎ書 | ある担当者の仕事を、後任が一人で続けられるようにする | その人が担当している業務すべて。進行中の案件や取引先との経緯など「いまの状況」も含む | 担当が変わるとき(平時から下書きがあると早い) |
引き継ぎ書にだけ必要なのは、「いま途中になっている案件」と「その人だけが知っている経緯や判断のコツ」です。逆に、業務台帳とマニュアルが平時からあれば、引き継ぎ書はこの2つを書き足すだけで済みます。
データで見る:手順を書き残す効果と、取り組みの現状
2026年版小規模企業白書は、小規模事業者に社内ノウハウの蓄積・共有について尋ねています。取り組んでいる事業者が「有効だった」と答えた取組は、「マニュアルや手順書の整備」(39.1%)が最も多く、「社員同士の交流機会の提供」(35.9%)、「社内勉強会・研修の実施」(28.7%)が続きました[1]。得られた効果は、「担当者不在時でも業務が滞りなく遂行できるようになった」(43.6%)が最も多く、次いで「業務の引継ぎが円滑に行えるようになった」(31.9%)、「製品・商品・サービスの品質が安定した」(31.2%)でした[1]。
一方、厚生労働省の令和7年度「能力開発基本調査」では、技能継承の取組を行っている事業所は83.7%ですが、取組の内容(複数回答)で「退職予定者の伝承すべき技能・ノウハウ等を文書化、データベース化、マニュアル化している」は22.0%でした[2]。「中途採用を増やしている」(56.2%)や、退職者を再雇用して指導者として活用する取組(54.7%)と比べると少数です[2]。同じ調査で、技能継承の問題点の2番目は「技術・ノウハウ等の伝承に時間がかかり円滑に進まない」(60.6%)でした[2]。
書き残すことの効果は白書で確かめられているのに、退職予定者の仕事を書き残している事業所はまだ多くありません。私たちは、書き残す取り組みが進まない理由の一つは「何を・どこまで書けばよいか」が決まっていないことだと考えています。次の章から、その形を具体的に示します。
引き継ぎ書は「一覧表」と「業務シート」の2種類で作る
引き継ぎ書は、1つの文書として説明されることが多いものです。けれども、中小企業では一人の担当者が経理も総務も受注対応も兼ねていることがよくあり、1つの文書にすべて書こうとすると、長くなって書き終わりません。私たちは次の2種類に分けることをおすすめしています。
- 一覧表(1枚):その人が担当している業務を、漏れなく1行ずつ並べた表。後任と上司が「何を引き継ぐのか」を一目で確かめるためのもの
- 業務シート(業務ごとに1枚):1つの業務について、手順・判断のコツ・連絡先などを書いたもの。止まると困る業務から順に作る
一覧表が先にあれば、時間が足りなくなっても「どの業務が書けていないか」が分かります。全部の業務シートがそろわなくても、一覧表だけは必ず完成させる、という進め方ができます。
一覧表に書く項目
一覧表は、表計算ソフトで1業務1行にして作ります。項目は次の8つがおすすめです(私たちのおすすめです)。
| 項目 | 書く内容 | 記入例 |
|---|---|---|
| 業務名 | 何の仕事か。人によって呼び方が違う場合は、社内で通じる名前で | 仕入先への月次発注 |
| 頻度・時期 | 毎日・毎週・毎月・毎年のどれか。締め切りの日 | 毎月20日締め、25日までに発注 |
| かかる時間 | 1回あたりのおおよその時間 | 約2時間 |
| 止まったときの影響 | やらないと、誰が・いつ困るか | 翌月の材料が足りず、製造が止まる |
| 後任 | 誰が引き継ぐか。決まっていなければ「未定」と書く | 総務の○○さん |
| 書く深さ | 業務シートをどこまで詳しく書くか(次の章のA・B・C) | A |
| 業務シートの有無 | 作成済み・作成中・なし | 作成済み |
| 引き継ぎの状況 | 説明した・一緒にやった・後任が一人でできた | 一緒にやった(9月分) |
「毎年1回だけ」の業務(決算の準備、保険や許認可の更新、年末調整、棚卸しなど)は、書き出すときに忘れやすいところです。1年分の予定表やメールを見返しながら書き出すと、漏れを減らせます。
業務シートに書く項目と記入例
業務シートは、1つの業務につきA4で1〜2枚を目安にします。項目と記入例は次のとおりです(私たちのおすすめです。記入例は説明のために作った架空のものです)。
| 項目 | 書く内容 | 記入例(仕入先への月次発注) |
|---|---|---|
| 目的 | 何のための仕事か | 翌月の製造に必要な材料を、欠品も余りもなくそろえる |
| 始まりと終わり | 何がきっかけで始まり、何ができたら終わりか | 20日に在庫表が出たら開始。仕入先から納期の回答が来たら終了 |
| 手順 | 作業の順番。使うシステム・書類・ファイル名 | ①在庫表を出力 → ②翌月の受注予定と比べる → ③発注書を作成 → ④上長の承認 → ⑤メールで送付 |
| 判断のコツ | 迷うところと、そのときの判断の基準 | 受注予定が前月より大きく増えているときは、営業に確度を確認してから数量を決める |
| 例外・トラブル | いつもと違うことが起きたときの対応。過去にあったこと | 仕入先から納期遅れの連絡があったら、すぐ製造のリーダーに伝える |
| 関係者 | 社内の相談相手、社外の担当者(連絡先は会社の名簿の場所を書く) | 承認は工場長。仕入先の窓口は営業の△△さん |
| ファイル・物の場所 | データの保存場所、紙の書類の保管場所 | 共有フォルダ「発注」→年度別フォルダ。控えは事務所の棚 |
| 進行中の案件 | 引き継ぐ時点で途中のもの。次にやること | 10月分は発注済み・納期回答待ち。□□社の単価見直しは11月に回答予定 |
| 最終更新日・書いた人 | いつ・誰が書いたか | 2026年10月1日 前任者名 |
書く深さは、すべての業務で同じにする必要はありません。私たちは、一覧表の「止まったときの影響」を見て、次の3段階に分けることをおすすめしています。
A(詳しく書く):止まると取引先やお金に影響する業務、年に数回しかなく思い出しにくい業務。上の表の全項目を書き、後任が一人でできるまで確かめる。B(要点だけ書く):手順が単純で、周りに分かる人がいる業務。目的・手順・ファイルの場所だけ書く。C(一覧表だけ):誰でもできる業務、やめてもよい業務。業務シートは作らない。
業務棚卸しから作る6つの手順
次の6つの手順は、公的に決められた方法ではなく、私たちがおすすめしている順番です。
| 手順 | やること | できあがるもの |
|---|---|---|
| 1. 担当業務をすべて書き出す | 業務台帳があれば、その人の担当分を抜き出す。なければ、1年分の予定表・メール・共有フォルダを見ながら書き出す | 担当業務のリスト |
| 2. 止まると困る順に並べ、書く深さを決める | 締め切り・取引先への影響・頻度を見て、A・B・Cに分ける。上司と一緒に決める | 優先順位つきのリスト |
| 3. 一覧表を作る | 8つの項目を埋める。後任が未定の業務は「未定」と書き、上司が決める | 一覧表(1枚) |
| 4. 業務シートを書く | Aの業務から書く。判断のコツは、後任や上司が質問して聞き取る | 業務シート |
| 5. 後任が読んで、やってみて直す | 後任が業務シートを見ながら実際にやり、分からなかった点を書き足す | 後任の言葉で直した業務シート |
| 6. 置き場所と更新の決まりを作る | 共有フォルダに置き、いつ・誰が見直すかを決める | 保管場所と更新のルール |
手順1がいちばん時間のかかるところです。平時に業務の棚卸しをして業務台帳を作っておけば、担当が変わるときは手順2から始められます。業務台帳の作り方は、別の記事「業務棚卸しのやり方」で紹介しています。
手順4では、前任者に「全部書いてください」と任せきりにしないことが大切だと私たちは考えています。慣れている本人ほど、判断のコツを「当たり前のこと」と感じて書き落とします。「この作業でいちばんミスが起きやすいのはどこですか」「いつもと違うと気づくのはどんなときですか」と後任や上司が質問し、答えを書き足していくほうが、役に立つ引き継ぎ書になります。
手順5は省かれやすいところです。引き継ぎ書は、後任が一人で仕事をやり終えて初めて「できた」といえます。前任者がいるうちに、少なくともAの業務は1回、後任が自分でやってみる日程を組んでください。
時間がないとき・後任が決まっていないとき
期間の定めのない雇用では、民法第627条により、各当事者はいつでも解約の申入れができ、雇用は申入れの日から2週間を経過することによって終了します[5]。就業規則の定めや個別の事情で扱いが変わることがあるため、具体的な対応は社会保険労務士などの専門家に確認してください。いずれにしても、引き継ぎに使える日数が少ない場面は起こりえます。そのときの優先順位として、私たちは次の順番をおすすめしています。
- 1日目:一覧表を完成させる(業務シートがなくても、何があるかだけは残す)
- 次に:進行中の案件と、次の締め切りが近い業務を書く
- 次に:Aの業務の「判断のコツ」と「例外・トラブル」を、聞き取りで残す(録音して、あとで文字にしてもよい)
- 最後に:手順の細かい部分。画面の写しや実物の書類を残してもらい、後任があとで手順に直す
後任が決まっていないときは、上司(小さな会社では社長)が受け取り手になって、手順5の「読んで、やってみる」まで行うのがおすすめです。後任が入社してから読むだけの引き継ぎ書は、分からない点を前任者に聞けないため、手順5を前任者がいるうちに誰かが済ませておくことが大切だと私たちは考えています。
パスワード・アカウント・鍵は、引き継ぎ書に書かずに会社の手続きで渡す
引き継ぎ書に書いてはいけないものがあります。パスワードです。引き継ぎ書は後任や上司が読めるように共有フォルダに置くため、そこにパスワードを書くと、読める人すべてに知られてしまいます。前任者のIDとパスワードを後任がそのまま使い続けるのもおすすめしません。誰が操作したのかが分からなくなるためです(私たちの考えです)。
独立行政法人情報処理推進機構(IPA)の「中小企業の情報セキュリティ対策ガイドライン」は、対策例として「同じID・パスワードを複数サービス間で使い回さない」「使用するパソコン等は他者と共有しない。共有せざるを得ない場合は、別途ユーザーアカウントを作成する」「従業員の異動や退職時には速やかに設定を変更(削除)する」を挙げています[3]。また、役職員の退職後などにおける情報の不正利用を防ぐために、退職時に情報や機器・ID・鍵等を回収し、チェックリストや証跡で実行状況を見えるようにすることをすすめています[3]。
IPAの「組織における内部不正防止ガイドライン」は、異動又は退職により不要となった利用者ID及びアクセス権は、ただちに削除しなければならないとしています[4]。同ガイドラインの事例集には、元従業員のアカウントが削除されておらず、リモートアクセスを使って機密情報が持ち出された例が載っています[4]。
引き継ぎ書には、「どのシステムを使うか」「アカウントの発行や権限の変更を誰に頼むか」までを書き、パスワードそのものは書かないようにしてください。アカウント・鍵・印鑑・貸与している機器は、引き継ぎ書とは別に、会社として次のような受け渡しの表を作るのがおすすめです(表の形は私たちのおすすめです)。
| もの | 前任者について行うこと | 後任について行うこと | 確かめる人 |
|---|---|---|---|
| 業務システム・クラウドサービスのアカウント | 退職日・異動日に削除または停止する | 後任の名前で新しく発行し、必要な権限だけを付ける | 管理者(社長・総務) |
| 共有フォルダ・メールの権限 | 権限を外す。個人のフォルダにある業務ファイルは共有フォルダへ移す | 必要なフォルダの権限を付ける | 管理者 |
| 部署で共有しているアカウント | パスワードを変更する | 新しいパスワードを会社で決めた方法で伝える | 管理者 |
| 鍵・入館証・印鑑 | 返却を受ける | 貸与し、記録する | 上司 |
| パソコン・携帯電話・書類 | 返却を受け、業務データが残っていないか確かめる | 貸与し、記録する | 上司 |
分かりやすく書くコツ
後任が読んで迷わない引き継ぎ書にするために、私たちは次の点をおすすめしています。
- 1つの文に、やることを1つだけ書く。「〜して、〜して、〜する」と続けない
- 社内だけの言葉や略語には、最初に説明を付ける
- 「適宜」「必要に応じて」と書かず、どんなときに・何をするかを書く
- 画面や書類は、写真や画面の写しを貼る(個人情報が写っていないか確かめる)
- ファイルの場所は、フォルダ名を順番に書く。「いつものフォルダ」と書かない
- 「なぜそうするのか」を一言添える。理由が分かれば、後任は例外にも対応しやすくなる
- 書いた日と書いた人を必ず入れる
よくある失敗と対策
引き継ぎ書づくりで起きやすい失敗を、対策とあわせて表にしました(私たちの整理です)。
| よくある失敗 | 起きること | 対策 |
|---|---|---|
| 退職が決まってから書き始める | 有給休暇の取得や残務と重なり、書く時間が足りなくなる | 平時に業務台帳と一覧表を作っておく |
| 書きやすい業務から書く | 毎日の単純な業務ばかり詳しくなり、止まると困る業務が残る | 一覧表でA・B・Cを決めてから書く |
| 手順だけを書く | いつもと違うことが起きたときに、後任が判断できない | 判断のコツと例外を、質問して聞き取る |
| 年1回の業務が抜ける | 半年後に「誰もやり方を知らない」と気づく | 1年分の予定表を見ながら書き出す |
| 渡して終わりにする | 後任が読んでも分からず、前任者はもういない | 前任者がいるうちに、後任が一人でやってみる |
| 個人のパソコンに保存する | 次の引き継ぎのときに見つからず、また一から書くことになる | 共有フォルダに置き、更新する人と時期を決める |
引き継ぎ書のチェック表
引き継ぎ書ができたら、前任者・後任・上司の3人で次の項目を確かめてください(私たちのおすすめです)。
- □ 一覧表に、担当している業務がすべて入っている(毎月・毎年しか発生しない業務も含む)
- □ すべての業務に、後任(または「未定」)と書く深さ(A・B・C)が書かれている
- □ Aの業務には業務シートがあり、目的・手順・判断のコツ・例外・関係者・ファイルの場所が書かれている
- □ 進行中の案件と、次にやること・締め切りが書かれている
- □ パスワードが引き継ぎ書に書かれていない
- □ アカウント・権限・鍵・印鑑・機器の受け渡しを、会社の手続きで行った
- □ Aの業務は、後任が業務シートを見ながら一人でやり終えた
- □ 後任が分からなかった点を、業務シートに書き足した
- □ 引き継ぎ書を共有フォルダに置き、次に見直す時期と担当を決めた
引き継ぎ書を「一度きり」にしない
引き継ぎ書は、担当が変わるたびに一から作ると大きな負担になります。私たちは、引き継ぎが終わったあと、一覧表を会社の業務台帳に、業務シートを手順書として残し、次の担当替えのときにも使えるようにしておくことをおすすめしています。白書で「担当者不在時でも業務が滞りなく遂行できるようになった」という効果が最も多かったように[1]、書き残したものは、退職のときだけでなく、急な休みや繁忙期の応援のときにも役に立ちます。
文章を書く作業には、AIも使えます。聞き取りの録音を文字にして業務シートの下書きを作る、書いた手順の抜けを指摘させる、といった使い方です。ただし、AIが作った下書きには誤りが混じることがあるため、前任者と後任が内容を確かめること、取引先や個人の情報を入力するときは会社のルールに従うことが前提です。
自社だけで進めにくいときは、国が全国に設置した無料の経営相談所「よろず支援拠点」で、何度でも無料で相談できます[6]。Enbitoでも、AIインタビューで社員から業務を聞き取って業務台帳をつくる業務棚卸しAI「縁SCAN」を提供しています。引き継ぎ書の前に、まず担当業務を書き出すところから進めたい場合は、あわせてご覧ください。
よくある質問
- Q.引き継ぎ書には何を書けばよいですか?
- A.私たちは、担当業務を1行ずつ並べた「一覧表」と、業務ごとの「業務シート」の2種類に分けることをおすすめしています。一覧表には業務名・頻度と時期・かかる時間・止まったときの影響・後任など、業務シートには目的・手順・判断のコツ・例外やトラブル・関係者・ファイルの場所・進行中の案件を書きます。
- Q.引き継ぎ書はいつ作ればよいですか?
- A.担当が変わると決まってからでは時間が足りないことがあります。期間の定めのない雇用では、民法上、解約の申入れから2週間で雇用が終わるためです[5]。私たちは、平時に業務の棚卸しをして業務台帳と一覧表を作っておき、担当が変わるときに進行中の案件と判断のコツを書き足す進め方をおすすめしています。
- Q.引き継ぎ書とマニュアルは何が違いますか?
- A.マニュアル(手順書)は、1つの業務の手順を、誰がやっても同じ結果になるようにそろえる文書です。引き継ぎ書は、ある担当者の仕事すべてを後任が続けられるようにする文書で、進行中の案件や取引先との経緯など「いまの状況」も含みます(私たちの整理です)。マニュアルが平時からあれば、引き継ぎ書に書く量は少なくて済みます。
- Q.パスワードは引き継ぎ書に書いてよいですか?
- A.書かないことをおすすめします。IPAのガイドラインは、異動や退職で不要になった利用者IDとアクセス権を、ただちに削除しなければならないとしています[4]。前任者のアカウントは削除または停止し、後任には後任の名前でアカウントを発行して、パスワードは会社で決めた方法で渡してください。引き継ぎ書には、使うシステムの名前と、アカウントの発行を頼む相手を書いておきます。
- Q.手順書を整えると、どんな効果がありますか?
- A.2026年版小規模企業白書では、社内ノウハウの蓄積・共有に取り組む小規模事業者が得られた効果として、「担当者不在時でも業務が滞りなく遂行できるようになった」(43.6%)、「業務の引継ぎが円滑に行えるようになった」(31.9%)、「製品・商品・サービスの品質が安定した」(31.2%)が上位に挙がっています[1]。
参考・出典
- [1]中小企業庁「2026年版 小規模企業白書(HTML版)第2部第1章第2節 小規模事業者の経営リテラシー向上(第2-1-49図・第2-1-50図)」
- [2]厚生労働省「令和7年度「能力開発基本調査」調査結果の概要(PDF。事業所調査「技能の継承について」図62〜64)」
- [3]独立行政法人情報処理推進機構(IPA)「中小企業の情報セキュリティ対策ガイドライン 第4.0版(2026年3月。PDF)」
- [4]独立行政法人情報処理推進機構(IPA)「組織における内部不正防止ガイドライン 第5版(2022年4月改訂。PDF)(5)情報システムにおける利用者のアクセス管理、(24)雇用終了及び契約終了による情報資産等の返却、付録Ⅰ 内部不正事例集」
- [5]e-Gov法令検索(デジタル庁)「民法(明治29年法律第89号)第627条(期間の定めのない雇用の解約の申入れ)」
- [6]よろず支援拠点全国本部(中小企業基盤整備機構)「よろず支援拠点・生産性向上支援センターとは」
制度・数値は2026.10.04時点で各公式情報を確認したものです。補助金・助成金などは公募回ごとに内容が変わるため、申請の前に必ず最新の公式情報をご確認ください。

Author
中胡 翔太郎株式会社Enbito 代表取締役
広島県出身。大手日系事業会社で生成AIを実際の業務に組み込み、大手外資系コンサルティングファームで企業の業務改革を支援。個人事業として30社以上の企業・事業者の立ち上げと成長に伴走。現在は株式会社Enbitoの代表として、地方の中小企業のAI活用支援・業務改善に取り組んでいます。
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