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産休・育休の引き継ぎの進め方|中小企業が担当者の業務を止めずに回す棚卸し表・代替の3つの方法・復帰までの時系列表【公的資料】

産休・育休の引き継ぎは、退職の引き継ぎとは別物です。本人は戻ってくる前提で、期間が決まっていて、男性の育休は開始日が直前まで分からないこともあります。社員が数人から数十人の会社が、担当者の業務を止めずに回し、復帰のときにきちんと「返す」ための順番を、厚生労働省の資料をもとにまとめました。

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この記事の要点

  • 育児休業の取得率は、女性86.6%・男性40.5%(令和6年度)で、男性は前年度から10.4ポイント上がりました。男性の育休取得者のうち60.6%が産後パパ育休を使っています[1]。従業員5〜29人の事業所で育児休業制度の規定があるのは68.6%で、規模が小さいほど低くなっています[1]。
  • 産休・育休の引き継ぎは、退職と違って「戻ってくる前提」です。渡すものを「後任に預ける・周りで分ける・いったん止める・仕組みにする」の4つに仕分けし、復帰のときに何を戻すかまで決めておくことをおすすめします(私たちの考えです)。
  • 厚生労働省の「育休復帰支援プラン」策定マニュアルは、業務の棚卸しを行い、分量を一覧にして必要性で分類し、必要性の低い業務は省略・廃止・外部化することを勧めています[2]。手順書の整備は、小規模企業白書でも「担当者不在時でも業務が滞りなく遂行できるようになった」43.6%と効果が示されています[7]。
  • 令和8年度の両立支援等助成金では、育児休業等支援コース(中小企業のみ。育休取得時30万円・職場復帰時30万円)と、育休中等業務代替支援コース(業務代替手当の4分の3、新規雇用は9万〜81万円)があります[4]。どちらも「休業の前日までに引き継ぎを実施」「プランを作ってから引き継ぐ」などの要件があり、引き継ぎを終えてから申請する形は対象外です[5][6]。

ガイドこのテーマの全体像は中小企業の業務引継ぎの進め方

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「事務を1人で回している社員から、妊娠の報告を受けた」「若手の男性社員が、産後パパ育休を取りたいと言ってきた。初めてのことで何から準備すればよいか分からない」。従業員が数人から数十人の会社では、1人の休業がそのまま業務の停止につながりやすく、経営者や総務の担当者が一番気にするのは「その人の仕事を誰がどう回すか」です。

この記事では、中小企業の会社側の目線で、産休・育休の引き継ぎを、退職の引き継ぎとの違い、妊娠の申出から復帰後までの時系列表、業務の棚卸し表と4つの仕分け、代替の3つの方法、休業中の権限と連絡の扱い、復帰のときの「返し方」、令和8年度の助成金、チェック表の順に整理します。数字と制度は、厚生労働省の資料を2026年10月18日に原本で確認したものだけを載せています。社会保険・雇用保険の手続きや給付金の計算は、この記事では扱いません(厚生労働省のマニュアルに人事・総務担当者向けの手続きリストがあります[2])。業務の仕分け方や進め方など私たちの考えは、そうと分かるように書いています。

業務の引き継ぎ全般の進め方は「中小企業の業務引継ぎの進め方」の記事に、引き継ぎ書の書き方は「引き継ぎ書の作り方」の記事にまとめています。この記事は「産休・育休」という場面にしぼった内容で、経理・総務・営業の職種別の記事と同じ型(棚卸し表・順番・権限の受け渡し)で書いています。

データで見る:育休は「たまに起きること」ではなくなった

厚生労働省の令和6年度「雇用均等基本調査」(令和7年7月30日公表)によると、令和4年10月から令和5年9月までの1年間に出産した女性のうち、令和6年10月1日までに育児休業を開始した人の割合は86.6%でした。配偶者が出産した男性では40.5%で、前年度(30.1%)から10.4ポイント上がっています。育児休業を開始した男性のうち、産後パパ育休(出生時育児休業)を取得した人は60.6%でした[1]。

規模の小さい会社ほど、制度の整備が追いついていないことも、同じ調査から分かります。育児休業制度の規定がある事業所の割合は、500人以上で90.2%、100〜499人で84.6%、30〜99人で82.3%、5〜29人で68.6%と、規模が小さくなるほど低くなっています[1]。

引き継ぎを楽にする方法は、別の調査でも示されています。2026年版小規模企業白書では、社内ノウハウを蓄積・共有するうえで有効だった取組は「マニュアルや手順書の整備」が39.1%で最も高く、得られた効果は「担当者不在時でも業務が滞りなく遂行できるようになった」43.6%、「業務の引継ぎが円滑に行えるようになった」31.9%でした[7]。一方、厚生労働省の令和7年度「能力開発基本調査」では、退職予定者の技能・ノウハウを文書化・データベース化・マニュアル化している事業所は22.0%にとどまります[8]。

厚生労働省の「育休復帰支援プラン」策定マニュアル(令和7年3月一部改訂)は、男性の育休取得を阻む壁の1つとして「業務遂行の壁」(残業が多い、自分しかできない仕事があるため周囲に迷惑をかけるのではないかという不安)を挙げ、対応として「業務の棚卸しを行い、仕事を見える化し、属人的な業務を減らして分担してもらう」ことを勧めています[2]。会社側が引き継ぎの段取りを持っているかどうかが、本人が休めるかどうかを左右する、ということです。

退職の引き継ぎと何が違うか:戻ってくる前提で考える

産休・育休の引き継ぎを、退職の引き継ぎと同じ手順でやると、うまくいかないところが出てきます。違いを表にします(違いの整理は私たちの考えですが、制度の部分は厚生労働省の資料によります)。

観点退職の引き継ぎ産休・育休の引き継ぎ会社側が気をつけること
本人はどうなるかいなくなる戻ってくる。原則として元の職場・職務(原職等)に復帰させることが助成金の要件にもなっている[5]「預ける」と「渡す」を分け、復帰のときに何を戻すかまで決めておく
期間決まっていない(退職日以降はいない)おおむね決まっている。ただし保育所に入れないなどの場合、子が1歳6か月(再延長で2歳)まで延びることがある[2]「予定どおり戻る」前提だけで組まず、延びたときの形も1つ用意する
短い休業・分割ない産後パパ育休は子の出生後8週間以内に4週間まで、2回に分割できる。1歳までの育児休業も2回に分割できる[2]1〜4週間の休業と、1年の休業で、引き継ぎの深さを変える(後述)
開始日退職日は決まる男性は子の出生日以降に取るため、休業開始日が直前まで分からないことがある[2]早めに棚卸しと見える化を済ませ、いつ始まっても困らない状態にしておく[2]
休業中に聞けるか退職後は原則として頼めない休業中に業務を行わせることはできない。情報提供や連絡は、本人の意向を確認したうえで負担にならない範囲で[2]「困ったら本人に電話する」を前提にしない。産後パパ育休中の就業は労使協定と本人の申出が要る[2]
復帰後の働き方—短時間勤務(3歳未満、原則1日6時間)や所定外労働の制限(小学校就学前)を請求できる[2][3]復帰=元どおり、ではない。復帰後の分担も見直す

一番大きな違いは、「戻ってくる」ことです。退職なら、本人の業務を全部ほかの人に渡して終わりですが、産休・育休では、渡したものを復帰のときに戻すか、戻さずにそのまま新しい分担にするかを決める必要があります。この「戻す・戻さない」を最初に決めておくと、休業中の周囲の負担も、復帰後の本人の負担も軽くなると私たちは考えています。

時系列表:妊娠・出産の申出から復帰後まで、会社側がやること

会社側がやることを、時間の順に並べます。法律で義務になっている項目と、厚生労働省のマニュアルが勧めている面談の時期、助成金の要件になっている項目を区別して書きます。

時期会社側がやること根拠
本人または配偶者の妊娠・出産等の申出があったとき育児休業・産後パパ育休の制度、申出先、給付、社会保険料の扱いを個別に知らせ、取得の意向を確認する(義務)。あわせて勤務時間帯・勤務地・制度の利用期間などの意向を聴き、配慮する(令和7年10月1日から義務)育児・介護休業法[2][3]
申出のあと、できるだけ早く個別の周知・意向確認の実施時期の目安:出産予定日の1か月半以上前の申出なら1か月前まで、1か月半前〜1か月前の申出なら2週間以内などマニュアル[2]
妊娠報告後・休業2か月前上司との面談(引き継ぎ、復帰後の業務内容)、人事・総務との面談(制度の利用)。「育休復帰支援面談シート」が使えるマニュアルの面談の4つのタイミング[2]
休業前業務の棚卸し → 必要性で分類 → 省略・廃止・外部化 → 上位者・下位者への分担、または代替要員の確保。産後パパ育休の申出期限は法定で原則2週間前(労使協定で1か月前までにできる)なので、早めに申し出てもらう仕組みをつくるマニュアル[2]
休業開始の前日までプランにもとづいて引き継ぎを実施(対面が難しければ電話・メール・書面でも可)。助成金(育児休業等支援コース)の要件支給要領[5]
休業中社内報や人事関係書類の送付の機会に会社の状況を知らせる。メールやオンラインでの連絡は休業前に本人の意向を確認し、負担にならないようにする。休業中に業務を行わせないマニュアル[2]
復帰1〜2か月前面談(復帰の時期、子の預け先、復帰後の働き方の希望)。育児休業終了前の面談と記録は助成金(職場復帰時)の要件マニュアル[2]、支給要領[5]
復帰後2か月面談(両立の状況、業務面の支障)。作業手順が変わった場合はサポート役を決めるマニュアル[2]
子が3歳になるまでの適切な時期(1歳11か月〜2歳11か月)3歳以上小学校就学前の子を養育する従業員向けの「柔軟な働き方を実現するための措置」(始業時刻の変更、テレワーク、短時間勤務など5つから会社が2つ以上を選ぶ)と残業の制限を個別に知らせ、意向を確認する(令和7年10月1日施行)育児・介護休業法[2][3]

「育休復帰支援プラン」とは、中小企業が、自社の従業員の円滑な育休の取得と育休後の職場復帰を支援するために策定するプランです[10]。マニュアルには、面談シート、管理職向けのポイント集、妊娠期から復職後までの支援・手続きフロー、産休・育休の手続きリスト、業務引継書の記載例などの様式が付いています[2]。都道府県労働局では「仕事と家庭の両立支援プランナー」がプラン策定を支援しています[10]。

会社の人数が少ないと、「人事・総務との面談」と「上司との面談」が同じ社長になることも多いと思います。その場合でも、制度の話と仕事の話を分けて2回に分けると、本人が仕事の心配を口にしやすくなると私たちは考えています。

業務の棚卸し表:本人の仕事を1枚にして、4つに仕分ける

マニュアルは、制度対象者の業務を円滑に引き継ぐために「どのような業務にどれくらいの分量(工数)があるのか、一覧化して整理」し、「必要性や重要性等で分類」したうえで、「必要性の低い業務は、省略・廃止したり、外部化したりする」「重要度が高い、一定の権限の必要な業務等は、職位上位者に引継ぎ、それ以外の業務は職位下位者等に分担する」ことを勧めています[2]。これを、社員が数人から数十人の会社で使える1枚の表にすると、次のようになります(列の作り方は私たちの考えです)。

列書くこと例
業務本人がやっている仕事を、月次・週次・日次・随時に分けて書き出す請求書の発行(月次)、入金の消し込み(週次)、電話の一次対応(随時)
頻度・期限いつ、何日までに毎月5営業日まで、毎週金曜
相手社内の誰、社外のどこと関わるか取引先A社の経理、税理士事務所
必要な権限・ID会計ソフト、ネットバンキング、共有フォルダ、社印など会計ソフト(管理者)、ネットバンキング(承認)
属人度本人しか知らないことがどれだけあるか(高・中・低)高(相手ごとの決まり事が頭の中)
休業中の扱い(仕分け)①後任に預ける ②周りで分ける ③いったん止める・減らす ④仕組みにする(自動化・外注・手順化)のどれか①、または③
誰が仕分けごとに担当を1人決める社長、事務のBさん
復帰時に戻すか戻す/戻さない(新しい分担のままにする)戻す(本人の希望も確認)

表ができたら、「属人度が高い」「必要な権限がある」「期限がある」の3つに印を付けます。これが先に手を打つ業務です。残り期間が短いときは、印のある業務だけを深く引き継ぎ、ほかの業務は一覧と所在だけを渡します。

4つの仕分けのうち、私たちが先に考えることを勧めているのは③と④です。マニュアルも「これを機に効率化を図るとよい」としています[2]。休業は、やめてもよい仕事とまとめてもよい仕事を見つける機会でもあります。③と④で減らしてから、残った仕事を①と②に分けると、周囲の負担が小さくなります。

この表には、本人や家族の健康状態など、業務に関係のない個人情報は書きません。休業の時期や期間に関する本人の希望は、面談で確認して、人事・総務の記録のほうに残します。

代替の3つの方法:新しく雇う・周りで分ける・減らして仕組みにする

休業中の業務をどう回すかは、大きく3つに分かれます。マニュアルが挙げている「代替要員の確保」と「職場メンバーでの分担」に、私たちが勧める「減らして仕組みにする」を加えて比べます(比較の中身は私たちの整理です。助成金の部分は厚生労働省の資料によります)。

方法向いている場合気をつけること使える助成金(令和8年度)
新しく雇う・派遣で受け入れる休業が長い(数か月〜1年以上)、専門の資格が要る、周囲に余力がない復帰時の原職復帰に配慮した方策を先に考えておく[2]。教える時間が要るので、休業の1〜2か月前から入ってもらう形も検討する育休中等業務代替支援コース「新規雇用(育児休業)」:代替した期間に応じて最短7日以上で9万円、最長1年以上で81万円。常時雇用300人以下などの事業主が対象[4][6]
周りで分ける休業が短い〜中程度、社内の人でないと任せにくい業務、資格が必要ですぐに代替要員を確保しにくい[2]メンバーの負担が通常より重くなる。手当の支給は不公平感の解消につながるが、先に業務負荷を減らす方法(複数担当制、育成)を考える[2]同コース「手当支給等(育児休業)」:業務体制整備経費(1人目に1回、1か月以上の休業で6万円、7日以上1か月未満で2万円、社会保険労務士等に委託した場合は20万円)+業務代替手当の4分の3(月10万円が上限、24か月まで)。企業規模の要件なし[4][6]
減らして仕組みにするどの場合でも最初に「省略・廃止・外部化」はマニュアルも勧める手順[2]。ただし取引先との約束がある仕事は、相手に先に伝える—(「代替業務の見直し・効率化の取組」は手当支給等の要件の1つ[4])

マニュアルは、業務代替手当を設ける前に「まずは業務負荷を減らす方法を考える必要がある」とし、複数担当制の導入と従業員の育成を挙げています。手当を設ける場合は、対象となる期間・業務・時間、対象者、金額、支給方法(給与か賞与か)を決め、「一度始めたら廃止するのは難しい」ため、時間外労働の割増賃金の単価や社会保険料の増加も含めてシミュレーションすることを勧めています[2]。

助成金の要件は細かく、年度で変わります。支給要領では、業務代替手当は「業務代替者全員に支払われた総額で1万円(業務代替期間が1か月に満たない場合は、1日につき500円と比較していずれか低い方)以上増額されていること」などの条件があり、対象は1年度10人まで、初回から5年間です[4][6]。申請を考える場合は、管轄の都道府県労働局の雇用環境・均等部(室)に、休業の前に相談することをおすすめします。

休業の長さ別:引き継ぎの深さを変える

マニュアルは、男性の育休について「短期間の育休であったり、取得時期が個別の事情に応じて異なったり、産後パパ育休中に就業する場合もあるなど、休業の期間・時期・形態が多様」になるとし、取得のタイミング例として、配偶者の出産直後(1か月程度)、出産後一定の期間(3か月〜。「業務の棚卸しと分担の見直し、代替要員の確保などの対策を講じることが必要」)、配偶者の退院後や里帰りから戻った後(1週間〜数週間)、慣らし保育の期間(1か月程度)、配偶者の復職時(1か月〜数か月)を挙げています[2]。長さによって、引き継ぎの深さを変えることをおすすめします(私たちの考えです)。

休業の長さ引き継ぎの深さ先にやること休業中の回し方
1〜4週間(産後パパ育休など)A:一覧と所在。期限のある仕事と「止めてよい仕事」の線引きだけ棚卸し表の「期限」列を埋める。取引先に不在期間と窓口を伝える。開始日が動く前提で、1〜2週間前に準備を終える期限のある仕事だけ当番を決め、それ以外は止めるか待ってもらう
1〜3か月B:Aに加えて、属人度が高い業務の手順書(1枚)と、相手ごとの決まり事①預ける・②分けるの担当を決め、休業前に1〜2回、担当者が本人の隣で実際にやってみる週1回、担当者同士で止まっているものがないかを確認する
6か月〜1年以上C:Bに加えて、判断の理由と例外の扱い。代替要員を入れる場合はその人への教育③減らす・④仕組みにするを先に実行し、残った業務を①②に分ける。復帰時に戻すものを決める月1回、分担の負担を見直す。復帰1〜2か月前に「変わったことのリスト」を作り始める

どの長さでも、先にやるのは「期限のある仕事」と「相手のある仕事」です。社内で困るのは、過去の経緯が分からないことより、請求が出ない、返事が返らない、という「止まること」です。産後パパ育休のように開始日が直前まで分からない休業では、休業の1〜2週間前には準備を終えておくことを私たちは勧めています。

休業中の権限・連絡・取引先の扱い:預ける形にする

退職と違い、本人は戻ってきます。IDや権限を「削除」するのではなく「預ける」形にし、復帰のときに戻せるようにしておきます(表の中身は私たちの整理です。根拠は各行に示します)。

扱うもの休業前にやること休業中復帰時
会計ソフト・クラウドのID、ネットバンキングの権限代替の担当者に権限を渡す。本人だけが知っている共有パスワードは変える本人のIDは使わない状態にする(削除はしない)。休業中に本人のIDで操作しない本人のIDを戻し、代替の担当者の権限を見直す
会社のメールアドレス自動返信で不在期間と窓口を知らせる。必要な宛先は代替の担当者に転送する本人に「読んで対応して」と頼まない転送と自動返信を止め、休業中の重要なメールの要点を渡す
取引先担当変更の連絡(前任と代替の担当者の連名、会社の連絡先)。マニュアルは、取引先に自社の方針と「担当者の休業中は会社全体としてフォローを行い、業務に支障の生じることがない」旨を丁寧に説明し、理解を促すことを勧めている[2]代替の担当者が窓口になる復帰の連絡と、休業中の経緯の共有
本人への連絡連絡の手段と頻度を休業前に本人と決める。マニュアルは、オンラインでの連絡は本人の意向を確認したうえで、負担にならないよう配慮することを勧めている[2]会社の状況を知らせる。業務は頼まない—
産後パパ育休中の就業労使協定がある場合だけ、本人が申し出た条件の範囲で候補日を示し、本人の同意を得て書面で通知する。就業できるのは休業中の所定労働日・所定労働時間の半分まで[2]会社から一方的に就業を求めない。意に反する扱いをしない[2]—
鍵・社印・貸与品必要なものだけ代替の担当者に渡す。パソコンは休業中の扱い(会社保管か本人保管か)を決める—返却と再貸与を記録する

IPAの「組織における内部不正防止ガイドライン」は、情報システムの利用者のアクセス管理として、利用者IDの管理と権限の設定を求めています[9]。休業中の本人のIDを「生きたまま」にしておき、誰かが代わりにそのIDで操作する形は、誰が何をしたか分からなくなるので避けます。代替の担当者には、その人自身のIDと権限を用意します。

休業中の本人への連絡は、「本人のためになること」(会社の状況、人事異動、復帰に向けた準備)と「会社のためになること」(業務の質問)を分けて考えます。後者は原則として行わず、どうしても必要なときは、休業前に決めた手段と頻度の範囲で行います。産後パパ育休中の就業は、法律上の手続き(労使協定、本人の申出、書面での同意)を踏んだ場合だけ可能で、休業中の就業日数によっては出生時育児休業給付金や社会保険料の免除の要件を満たさなくなることがあります[2]。

復帰のときに「返す」:戻す業務と、戻さない業務

復帰は、引き継ぎの終わりではなく、もう1回の引き継ぎです。マニュアルは、復帰後しばらくは上司が面談等でフォローし、「休業前と仕事の流れや作業手順が変わった場合等は、作業面をサポートする従業員を任命する」ことを勧めています。また、短時間勤務だからといって本人の役割に見合わない軽い仕事を配分するとモチベーションが下がる可能性があるとし、「本人の役割に見合う仕事を任せ」「職場メンバーに過度な負担がかからないよう、職場全体の業務分担の見直しも検討」することを挙げています[2]。

私たちがおすすめする復帰の準備は、次の3つです(私たちの考えです)。

  • 変わったことのリスト:休業中に変わった手順、取引先の担当者、価格、ソフトの更新、社内の決まりを、代替の担当者が1枚にまとめる。復帰1〜2か月前の面談で渡し、復帰初日に読み合わせる。
  • 戻す・戻さないの確認:棚卸し表の「復帰時に戻すか」の列を、復帰前の面談で本人の希望(短時間勤務、残業の制限、テレワークなど)と照らして決め直す。休業中に「仕組みにした」業務は、戻さずにそのままにすることが多い。
  • 周囲の分担の戻し方:周りで分けていた業務を一度に戻すと本人が追いつかない。期限のある業務から順に、復帰後1〜2か月かけて戻す。代替の担当者が増やした分担も、ここで見直す。

復帰後の働き方は、法律で選べる幅が広がっています。3歳未満の子を養育する従業員は原則1日6時間の短時間勤務を、小学校就学前の子を養育する従業員は所定外労働の制限(残業免除)を請求できます[2][3]。令和7年10月1日からは、3歳以上小学校就学前の子を養育する従業員について、会社が「始業時刻等の変更」「テレワーク等(月10日以上)」「保育施設の設置運営等」「養育両立支援休暇(年10日以上)」「短時間勤務制度」の5つから2つ以上を選んで措置し、従業員がその中から1つ選んで使えるようにすることが義務になりました[3]。子の看護等休暇は、小学校3年生修了前の子について年5日(2人以上なら10日)です[2]。復帰後の分担は、こうした制度を本人が使う前提で組み直します。

令和8年度の両立支援等助成金:引き継ぎの段取りが要件になっている

両立支援等助成金のうち、産休・育休の引き継ぎに直接関係するのは2つのコースです。金額と主な要件を、厚生労働省の令和8年度のリーフレット(2026年4月作成)と支給要領(令和8年4月8日時点)で確認しました[4][5][6]。要件は細かく、年度途中に変わることもあるため、申請の前に必ず最新の支給要領と管轄の労働局で確認してください。

コース対象支給額引き継ぎに関係する主な要件
育児休業等支援コース ①育休取得時中小企業事業主のみ30万円(1事業主につき無期雇用1人・有期雇用1人まで)育児休業の取得・職場復帰支援に関する方針の社内周知。面談を実施して育休復帰支援プランを作成・実施。プランに「業務の整理、引継ぎに関する措置」と「休業中の職務や業務内容に関する情報・資料の提供に関する措置」を記載。休業(引き続き休業する場合は産前休業)の開始日の前日までにプランにもとづいて引き継ぎを実施。連続3か月以上の育児休業を取得。プランによらず既に引き継ぎを終了している場合は対象外[4][5]
育児休業等支援コース ②職場復帰時①と同じ取得者30万円休業中に職務や業務の情報・資料を提供。育児休業終了前に上司または人事労務担当者が面談を実施し記録。原則として原職等に復帰させ、申請日まで6か月以上継続雇用[4][5]
育休中等業務代替支援コース ①手当支給等(育児休業)企業規模の要件なし業務体制整備経費(1人目に1回:1か月以上の休業で6万円、7日以上1か月未満で2万円、社会保険労務士等に委託すれば20万円)+業務代替手当の支給額の4分の3(月10万円が上限、24か月まで。リーフレットの表記は最大240万円)。有期雇用労働者加算10万円代替業務の見直し・効率化の取組。業務代替者への手当制度等を就業規則等に規定。対象者が7日以上の育児休業を取得し、復帰後も申請日まで継続雇用。手当の総額が1万円(1か月未満の休業では1日500円と比べて低い方)以上増額[4][6]
同コース ②手当支給等(短時間勤務)企業規模の要件なし業務体制整備経費(1人目に1回:3万円、委託すれば20万円)+業務代替手当の4分の3(月3万円が上限、子が3歳に到達する月まで。リーフレットの表記は最大108万円)短時間勤務制度を1か月以上利用。手当制度の規定など[4][6]
同コース ③新規雇用(育児休業)特定事業主(常時雇用300人以下、または資本金3億円以下など業種別の基準)代替した期間に応じて、最短7日以上で9万円、最長1年以上で81万円代替要員を新規雇用または派遣受入で確保。対象者が7日以上の育児休業を取得し、復帰後も継続雇用[4][6]

注目してほしいのは、育児休業等支援コースの「休業の前日までに引き継ぎを実施」「プランによらず既に引き継ぎを終了している場合は対象外」という要件です[5]。つまり、先にプランを作り、そのプランにもとづいて引き継ぎを行う順番でなければ対象になりません。この記事の棚卸し表と時系列表は、そのまま「業務の整理、引継ぎに関する措置」の下書きになるように作っています(プランとして認められるかどうかは、支給要領と労働局で確認してください)。

育休中等業務代替支援コースの手当支給等は、企業規模の要件がなく、7日以上の休業から対象です[4][6]。産後パパ育休のような短い休業で「周りで分ける」ときにも使える制度です。手当の原資や就業規則の改定は社会保険労務士に相談する内容なので、この記事では扱いません。

産休・育休の引き継ぎでつまずきやすい5つのパターン

つまずき起きること防ぎ方(私たちの考え)
退職と同じ手順で全部渡す復帰時に戻すものが決まっておらず、本人も周囲も戸惑う棚卸し表に「復帰時に戻すか」の列を作り、休業前に決める
出産日が決まってから動く男性の育休は開始日が直前まで分からず、準備が間に合わない[2]申出のあった時点で棚卸しと見える化を始め、1〜2週間前には終える
困ったら本人に聞く前提にする休業中に業務を頼むことになり、本人の休養と給付の要件に影響しうる[2]手順書と「相手ごとの決まり事」を休業前に書く。連絡の手段と頻度を先に決める
本人のIDを周囲が使う誰が何をしたか分からなくなる代替の担当者に自分のIDと権限を用意し、本人のIDは止める[9]
引き継ぎを終えてから助成金を調べる「プランによらず既に引継ぎを終了している場合は支給対象外」で申請できない[5]申出があった時点で労働局に相談し、プランを作ってから引き継ぐ

産休・育休の引き継ぎチェック表(会社側)

確かめることできていれば
個別の周知・意向確認申出のあと、制度・申出先・給付・社会保険料の扱いを知らせ、取得の意向と働き方の意向を確認した[2][3]
棚卸し表本人の業務を1枚にし、頻度・期限・相手・権限・属人度を書き、①預ける②分ける③止める④仕組みにするに仕分けた
先にやる業務属人度が高い・権限が要る・期限があるものに印を付け、深さ(A・B・C)を決めた
代替の方法新しく雇う/周りで分ける/減らして仕組みにする、を決め、担当を1人ずつ決めた
引き継ぎの実施休業開始の前日までに、プランにもとづいて引き継ぎを行った[5]
権限とID代替の担当者に自分のIDと権限を用意し、本人のIDを止める日と戻す日を決めた[9]
取引先への連絡不在期間と窓口を、前任と代替の担当者の連名で伝えた[2]
休業中の連絡手段と頻度を本人と決め、業務は頼まないことを社内で共有した[2]
復帰の準備復帰1〜2か月前の面談の日を決め、「変わったことのリスト」の担当を決めた[2]
戻す・戻さない復帰後の働き方の希望を聞いたうえで、戻す業務と戻さない業務を決めた
助成金申請するなら、休業前に労働局へ相談し、最新の支給要領で要件を確認した[4]

まとめ:産休・育休の引き継ぎは「預けて、返す」段取り

産休・育休の引き継ぎは、戻ってくる前提の引き継ぎです。本人の業務を1枚の表にして、預ける・分ける・止める・仕組みにするの4つに仕分け、復帰のときに戻すものを決めておく。休業の長さで深さを変え、権限とIDは削除ではなく預ける形にし、休業中は業務を頼まない。復帰は「変わったことのリスト」と面談から始める。この順番なら、社員が数人から数十人の会社でも、1人の休業で業務が止まることを減らせると私たちは考えています。

厚生労働省のマニュアルは、育休復帰支援の取組が「職場全体の業務の効率化及び生産性の向上に繋がる可能性」があり、「育児や介護、その他何らかの理由により従業員が不在となることを前提に、属人化を解消するなど業務を見直していくことが必要」だとしています[2]。産休・育休の引き継ぎは、1人のための対応であると同時に、会社の業務を棚卸しし、属人化を減らす機会でもあります。

私たちEnbitoは、業務の棚卸しから始める業務改善とAI活用の支援を行っている民間の会社です。縁SCANは、社員への聞き取りをもとに業務を見える化する道具で、休業に入る担当者の仕事を書き出して仕分けることにも使えます。産休・育休で仕事を止めないための順番として、この記事がお役に立てば幸いです。

よくある質問

Q.男性社員から「産後パパ育休を取りたい」と言われました。申出は2週間前でよいのですか?
A.産後パパ育休の法定の申出期限は、原則として休業の2週間前までです。労使協定で雇用環境整備などの要件を定めている場合は、2週間超から1か月前までの範囲で申出期限を定めることができます[2]。ただし、男性の育休は子の出生日以降に取るため、休業開始日が直前まで分からないことがあります[2]。厚生労働省のマニュアルも「早めに申し出てもらうための周知や仕組みづくり」を勧めています[2]。会社側は、申出のあった時点で業務の棚卸しと見える化を始め、1〜2週間前には準備を終えておくことをおすすめします(私たちの考えです)。
Q.休業中の社員に、分からないことを電話で聞いてもよいですか?
A.休業中に業務を行わせることはできません[2]。会社の状況を知らせるなどの連絡は、休業前に本人の意向を確認したうえで、負担にならないように行うことをマニュアルは勧めています[2]。「困ったら本人に聞く」前提にせず、手順書と相手ごとの決まり事を休業前に書いておき、連絡の手段と頻度を先に決めておくことをおすすめします。産後パパ育休中の就業は、労使協定がある場合に、本人が申し出た条件の範囲で候補日を示し、本人の同意を書面で得た場合だけ可能で、就業できるのは休業中の所定労働日・所定労働時間の半分までです。就業日数によっては出生時育児休業給付金や社会保険料の免除の要件を満たさなくなることがあります[2]。
Q.社員が5人で、後任を雇う余裕がありません。どうすればよいですか?
A.まず「減らして仕組みにする」ことから始めてください。厚生労働省のマニュアルは、業務を一覧にして必要性で分類し、必要性の低い業務は省略・廃止・外部化すること、重要度が高い業務や権限の必要な業務は上位者に、それ以外は下位者等に分担することを勧めています[2]。残った業務を周りで分ける場合、令和8年度の両立支援等助成金「育休中等業務代替支援コース(手当支給等)」は企業規模の要件がなく、7日以上の育児休業から対象です。業務代替手当の4分の3(月10万円が上限)と業務体制整備経費が支給されます[4][6]。要件は細かいため、休業の前に管轄の労働局に相談してください。
Q.育休の引き継ぎで使える助成金はありますか?
A.令和8年度の両立支援等助成金に2つのコースがあります。育児休業等支援コースは中小企業事業主が対象で、育休復帰支援プランを作成し、休業の前日までにプランにもとづいて引き継ぎを実施し、連続3か月以上の育児休業を取得させた場合に30万円、休業中の情報提供と終了前の面談を行い原職等に復帰させて6か月以上継続雇用した場合にさらに30万円です。プランによらず既に引き継ぎを終えている場合は対象外です[4][5]。育休中等業務代替支援コースは、業務を代わりに行う社員への手当の4分の3(月10万円が上限)や、代替要員の新規雇用(期間に応じて9万〜81万円。常時雇用300人以下などの事業主が対象)に助成があります[4][6]。金額と要件は年度で変わるため、申請前に厚生労働省の最新の支給要領と労働局で確認してください。
Q.復帰後は短時間勤務になります。休業前の仕事を全部戻してよいですか?
A.全部を一度に戻すことはおすすめしません。マニュアルは、短時間勤務だからといって役割に見合わない軽い仕事を配分するとモチベーションが下がる可能性がある一方、職場メンバーに過度な負担がかからないよう職場全体の業務分担の見直しも検討するよう勧めています[2]。復帰1〜2か月前の面談で、復帰後の働き方の希望(短時間勤務、残業の制限、テレワークなど)を聞いたうえで、棚卸し表の「復帰時に戻すか」を決め直し、期限のある業務から順に1〜2か月かけて戻す形を私たちは勧めています。3歳未満の子を養育する従業員は原則1日6時間の短時間勤務を、小学校就学前の子を養育する従業員は所定外労働の制限を請求できます[2][3]。

参考・出典

  1. [1]厚生労働省「令和6年度雇用均等基本調査 事業所調査 結果概要(令和7年7月30日公表。PDF)育児休業取得率、育児休業制度の規定あり事業所割合(規模別)」
  2. [2]厚生労働省「「育休復帰支援プラン」策定マニュアル(令和7年3月一部改訂。PDF)ステップ3 育休前・育休中・復帰後の対策、男性育休取得を阻む3つの壁、取得のタイミング例、産後パパ育休中の就業、法律で定められた措置・制度のチェックリスト、業務引継書の記載例」
  3. [3]厚生労働省「育児・介護休業法及び次世代育成支援対策推進法の一部を改正する法律の概要(令和6年法律第42号。PDF)」
  4. [4]厚生労働省「2026(令和8)年度 両立支援等助成金のご案内(リーフレット No.14、2026年4月作成。PDF)」
  5. [5]厚生労働省「両立支援等助成金(育児休業等支援コース)支給要領(令和8年4月8日時点。PDF)0301a 支給対象事業主、0302 支給額」
  6. [6]厚生労働省「両立支援等助成金(育休中等業務代替支援コース)支給要領(令和8年4月8日時点。PDF)0209 特定事業主、0301 支給対象事業主、0302 支給額」
  7. [7]中小企業庁「2026年版 小規模企業白書(HTML版)第2部第1章第2節 小規模事業者の経営リテラシー向上(第2-1-49図・第2-1-50図)」
  8. [8]厚生労働省「令和7年度「能力開発基本調査」調査結果の概要(PDF。事業所調査「技能の継承について」図64)」
  9. [9]独立行政法人情報処理推進機構(IPA)「組織における内部不正防止ガイドライン 第5版(2022年4月改訂。PDF)(5)情報システムにおける利用者のアクセス管理」
  10. [10]厚生労働省「育休復帰支援プラン策定のご案内(プランの定義、マニュアルと様式、仕事と家庭の両立支援プランナー)」

制度・数値は2026.10.18時点で各公式情報を確認したものです。補助金・助成金などは公募回ごとに内容が変わるため、申請の前に必ず最新の公式情報をご確認ください。

Author

中胡 翔太郎株式会社Enbito 代表取締役

広島県出身。大手日系事業会社で生成AIを実際の業務に組み込み、大手外資系コンサルティングファームで企業の業務改革を支援。個人事業として30社以上の企業・事業者の立ち上げと成長に伴走。現在は株式会社Enbitoの代表として、地方の中小企業のAI活用支援・業務改善に取り組んでいます。

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